ドンチミとは?冬に仕込む韓国の水キムチと、母のやさしい即席レシピ

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ドンチミとは?|韓国の水キムチ、そのやさしい発酵のかたち

韓国の冬に欠かせない発酵料理、それが「ドンチミ(동치미)」です。

乳酸菌の力でじっくりと発酵した大根の水キムチは、すっきりとした酸味とみずみずしさが特徴で、まるで“飲む美容液”のよう。

塩と水、大根。
ごく限られた素材だけで生まれるこのシンプルな一品には、冬の暮らしとともに育まれてきた、家庭の知恵と季節のぬくもりが詰まっています。

冬の大根が教えてくれた味|
「凍沈(ドンチミ)」の意味と背景

「凍沈(ドンチミ)」とは、凍り沈む─。
つまり冬の寒さの中でじっくりと発酵を進めること。

寒さが深まる季節、大根は自身を守るために糖度を高めます。
その甘みを塩で引き出し、低温で静かに育てるのがドンチミの伝統的な製法です。

韓国では冬の保存食としてだけでなく、冷麺のスープにも使われるほど身近な存在。

冷え込んだ朝、少し凍ったドンチミのスープをひと口すすると、身体の内側からじんわり温まるような、そんな滋味が広がります。

焼き芋と一緒に|
冷麺だけじゃない、家庭の楽しみ方

「ドンチミと焼き芋が合うって知ってた?」

ある日、母がそう言いながら食卓に出してくれたのは、ほくほくの焼き芋と、冷えたドンチミ。

甘い芋と、酸味のある発酵スープ。
意外な組み合わせに驚きながらも、ひと口食べると、なぜか心がほどけていくようなやさしさがありました。

家庭のなかで受け継がれる食べ方は、レシピではなく「記憶」から生まれるのかもしれません。

通年で楽しむ、母の即席ドンチミ

「美味しいものは、一年中食べたいよね」

そう笑っていた母は、冬以外の季節にも楽しめるよう、即席のドンチミを考案しました。
材料は大根、豆もやし、ナツメ、生姜、にんにく─そして米の研ぎ汁。

大根は塩で下漬けし、豆もやしとなつめを軽く煮て、研ぎ汁に加え、発酵を促す。
わずかな時間で、驚くほどやさしい酸味と透明感のある味わいに仕上がる即席ドンチミは、夏にもぴったりの一品です。

豆もやしの記憶と、即席レシピのやさしさ

私が豆もやしを好きだったから。

それだけの理由で、母はドンチミに豆もやしを加えてくれていたのかもしれません。

ただの“即席料理”ではなく、

「この子が好きだから」
「これなら食べやすいから」

そんな想像とやさしさが、母の料理にはいつも込められていました。

豆もやしのシャキシャキとした歯ざわりと、ドンチミのさっぱりとしたスープ。
その調和は、レシピでは表現できない、家庭だけの特別な味でした。

発酵に込められた、家族を思う気持ち

ドンチミを通じて、私はあらためて「発酵」という言葉の重みを思います。

それは時間をかけてゆっくり育てること。

一見変化していないように見えて、じんわりと確かに深まっていく味。
そして、目に見えない思いやりが、そっと染み込んでいく。

「この人に美味しく食べてほしい」
「元気になってほしい」
そんな願いを込めて、母は台所で静かに発酵を続けていたのかもしれません。

7. 台所で受け継がれていくもの

今、私も台所に立ち、家族や生徒さんたちと料理を囲んでいます。

ドンチミを仕込むたび、母の背中が浮かび、あの澄んだスープの味がよみがえります。

受け継いだのは、味だけじゃない。

発酵に宿る、目に見えない想像力と、誰かを思う気持ち。
そうした記憶ごと、私は今も台所で受け継いでいます。


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