誰も来なかったらどうしよう─それでも準備をする朝

朝、障子を開けると、空はどんよりとした灰色だった。
風も少し冷たくて、こういう日はどうしても、気持ちも重たくなる。

スマホを手にとって、LINEの登録者数を確認して、インスタのリーチをチェックして、それからカレンダーを見る。
来週のレッスンは、まだ埋まっていない。

「誰も来なかったらどうしよう」

最近ふとした瞬間にそんな考えが頭をよぎる。


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本当はいつも、こわい

料理教室を始めて、何年も経つ。

ずっと満席だったわけじゃないし、手探りだった日々もたくさんある。
それでも、少しずつ通ってくれる方が増えて、リピーターさんも増えて、応援の言葉ももらえるようになった。

でも不思議なことに“怖さ”は今の方が大きい

あの頃は、ただがむしゃらだった。
今も、メニューによっては満席にならない月がほとんどで、まだがむしゃらに走り続けている。

Instagramの投稿が伸びない日、ブログのアクセスが落ちた日、LINEに返信が来ない日。
「やっぱり私、向いてないのかな」と思うことがある。

たぶん、誰にも見えないところで、たくさんの人がこういう気持ちと戦ってるんだと思う。


それでも、準備はしてしまう

そういう日でも、私はキッチンに立つ。

何も予定がない日でも、買い物リストを書いて、材料を揃えて、試作を始める。
誰かが来るかわからないのに、テーブルを綺麗に拭いて、花を摘んできて生けてみる。

「誰も来ないかもしれないけど、来てくれたときにちゃんと迎えられるようにしておきたい」
それだけが、準備を続ける理由だ。


思い出す“たった一人”の参加者

思い出す日がある。

料理教室を始めたばかりの頃。

少しずつInstagramのフォロワーが伸びてきて、料理教室にも人が入るようになってきた。

もっとたくさんの方にレッスンを受けてもらいたいと思い、オンラインレッスンに挑戦することにした。

そのオンラインレッスンの参加者は、前日までゼロだった。

正直、心が折れかけていた。

「もうやめようかな」って、夜中に泣きながら冷蔵庫を整理した。

でも、その日の深夜、1件の申し込みが入った。
いつも私のライブ配信にコメントをくれる常連さんだった。

たった一人の生徒さんと向かい合って、料理をした。

設備の関係で、オンラインレッスンは一度やめたが、その人は今でも忘れない。

「たった一人」でも、誰かの人生の一日にちゃんと関われる。
そう思ったら、料理を作る意味がまた見えてきた。


数じゃなくて、届き方の話

集客の数字を見るのは、しんどい。

「申し込みゼロ」に意味があるなんて、なかなか思えない。

だけど最近は少しだけ考え方が変わってきた。

“届いてない”んじゃなくて、“届く人が限られている”だけかもしれない。

今はまだ気づいていない誰かが、明日ふと、私の料理に出会ってくれるかもしれない。

その日まで、ちゃんと準備をしておきたい。

だから私は今日も台所に立ち、毎日自分の想いを発信し続けている。


最後に、読んでくれたあなたへ

正直な話、今もときどき…いや、常に「誰も来なかったらどうしよう」って思っている。

だけど、それでも私は台所に立つ。

そして今日もまた、にんにくを刻んで、ごま油を熱して、チヂミの焼け具合を確かめる。

料理は、誰かのために用意するもの。
でも同時に、自分の心を整える行為でもあると思う。

もしこの記事を読んで、少しでも「わかるな」と思ってくれたなら、
あなたと一緒にテーブルを囲める日が来たら、とても嬉しいです。

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