韓国の「伏日(ポンナル)」に学ぶ、
夏を越える食文化

「土用の丑の日」と聞いて、まず頭に浮かぶのはやはり鰻だろう。
栄養価が高く、夏バテ予防に効くとされるスタミナ食。
しかし、近年は価格の高騰もあり、「今年はちょっと手が出ないかも…」という声も少なくない。
でも実は、日本のお隣・韓国にも、暑さに立ち向かう「特別な食の日」があるのをご存じだろうか?
韓国には
「伏日(ポンナル)」という日がある
韓国では、夏の最も暑い時期にあたる三日間。
初伏(チョボク)
中伏(チュンボク)
末伏(マルボク)
を合わせて「三伏(サムボク)」と呼び、この期間に食べる伝統的な料理がある。
それが、「参鶏湯(サムゲタン)」。
若鶏のお腹に、高麗人参・なつめ・もち米・栗などを詰めてじっくり煮込んだ薬膳スープで、暑さに負けない身体をつくる「食養生」の一つとして、家庭でも専門店でも親しまれている。
伏日と土用は、どこか似ている

「伏日」と「土用の丑の日」。
両者を見比べてみると、じつはとても似ている。
どちらも、季節の変わり目にあたる時期。
どちらも、「このタイミングで食べると身体にいい」とされる、伝統的な食文化をもっている。
日本は鰻、韓国は参鶏湯。
だけど、今の私たちに必要なのは、
「○○を食べなきゃ」ではなく、
「何を食べれば、自分や家族の身体が喜ぶか」を選びとる感覚ではないだろうか。
参鶏湯は、なぜ「夏に」食べるのか?
鶏を一羽丸ごと煮込む参鶏湯は、一見すると「冬の料理」に思えるかもしれない。
でも韓国では、これを真夏に食べるのが風習だ。
その理由は、「以熱治熱(イヨルチヨル)」という考え方にある。
熱いものを食べて汗をかき、体の内側から涼しくするという知恵だ。

また、参鶏湯に入っている食材には、滋養強壮や疲労回復を助ける作用があり、暑さで消耗しがちな夏の身体をじんわりと整えてくれる。
つまり参鶏湯は、「食べる薬」なのだ。
高くなった鰻、代わりに選びたいもの
今年の鰻の価格は、ますます高騰している。
国産鰻は1尾3,000円超も珍しくない今、「土用の丑の日に鰻」は、ちょっとした贅沢になってしまった。
だけど「鰻じゃなきゃだめ」という決まりはない。
もともと江戸時代には、「土用の丑の日」に“う”のつく食べ物を食べると夏バテしないと言われていた。
うなぎ、うどん、瓜、梅干し、牛(うし)の肉──どれも滋養があり、暑さに負けないための知恵だった。
では今、わたしたちが選ぶとしたら?
同じように体をいたわる食べものとして、韓国には「参鶏湯(サムゲタン)」という、鶏に薬膳を詰めたスープがある。
日本の“うのつく”文化と、韓国の“伏日”の参鶏湯。
どちらも、季節の知恵として生きてきたものだ。
栄養があって、あたたかくて、家族で囲むのにぴったりな料理。
それが「参鶏湯」だ。
家庭の参鶏湯は、特別な風景になる

waktak cooking class では、毎年夏になると「参鶏湯レッスン」を行っている。
鶏肉の下処理から、もち米や薬膳の扱い方まで。
調味料に頼らず、素材の力でスープを引き出していく。
生徒さんたちは皆、「初めて鶏一羽を扱った」と言いながらも、台所の風景がぐんと豊かになるのを感じているようだった。
「うちでも作ってみたい」
「子どもがすごくよく食べた」
「なんだか、体が軽くなった気がする」
そんな声を聞くたびに、この料理は「食事」であり「薬」であり、そして「風景」なのだと実感する。
なかなか鶏一羽を用意するのも調理するのも大変だと思う。
毎年レシピを変えながら、家庭でも手軽に作れるような参鶏湯を考えました。
土用の丑の日に、参鶏湯という選択を

今年の土用の丑の日(2025年)は、7月24日と8月5日。
鰻もいいけれど、こんな時代だからこそ、「他の選択肢」を知っておくことも大切だ。
暑い夏に、熱いスープを。
食べ終わったあとに、ふうっと心がほどけるような優しさを。
それが、参鶏湯の力だ。
ぜひ今年は、waktak cooking classの台所で「参鶏湯」をつくってみませんか?
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