
先日から、気楽にやっている家族の交換日記。
その中に、笑顔の奥に隠れていた妻の本当の言葉が書かれていた。
「集客がなかなかうまくいかなくて、ママは落ち込んでいます」
今日はどんなことが書いてあるのかな…と気軽に見た僕はちょっとドキッとしてしまったけど、その下には、そんな母の苦労はまるでおかまいなしにこんな息子の言葉。
「今日、おれはいつものように20分休みにともだちとバスケをしました。俺のチームは7てんで…。」
この対照的な二人の書きっぷりに、なんだかつい笑ってしまった。
実はネガティブで繊細な母と、自己肯定感の塊のような息子。
そして、それを少し離れたところから見ている僕。
お互い、バラバラなようでいて、たぶんどこかで支え合っているのだと思う。
そんな妻が、ふと呟いた。
「あぁ、お刺身食べたい…」
僕に聞こえるか聞こえないかくらいの、弱々しい声。
それに「買ってこようか?」と返すと、
待ってました!と言わんばかりに、食い気味の声で
「うん!あとビールも!」
と返ってきたから、またおかしくて笑ってしまった。
でも、こんなふうに“食べたい”と言えて、“買ってくる”と言えるようになったのは、僕たちにとっては、ようやく手に入れた“ささやかな自由”だ。

結婚するために同棲を始めた頃、経験もないまま、たったふたりで農業の世界に飛び込み、ゼロどころか、マイナスから始まった暮らしがある。
僕は運送会社でドライバーのバイトをし、妻は農協の梨選果場で事務員をしながら、なんとか食いつないでいた。
その間も、お互いバイトが始まる早朝や、バイトが終わった夕方からせっせと農作業をしていた。
それでも果物農家の収入は秋から冬だけ。
つまり、それ以外の季節はバイトで生きるしかなかった。
電気代の基本料を下げるために、アンペア数を一番低くして、ドライヤーを使うだけでブレーカーが落ちた寒い冬。
買い物は週に一度だけ。予算は2,500円以内。
つまりは、1ヶ月の食費はふたりで10,000円だった。
スマホの電卓を片手に、ビクビクしながら買い物をする日々。
あの頃、僕たちの夢はただ一つだった。
「毎日ビールが飲めるようになること」
それだけ。
だから今、食べたいときに刺身を買って、“ついでに”ビールも買えるというのは、僕たちにとって、奇跡のようなことなんだと思う。
どんなに落ち込もうが、
どんなに悔しかろうが、
どんなに悲しかろうが、
もう僕たちは、あの頃よりずっと自由で、ずっと幸せだ。
妻は大好きな料理教室をしていて、
僕は大好きな農業をしていて、
何より、あの頃はいなかった息子が増えた。

夕方には、大好きな家族と一緒にごはんを食べて、
夢だった自分たちの家に住み、
夜にはアニメを見ながら、ビールを飲む。
何より、ブレーカーを気にせずドライヤーも、なんなら電気湯沸かし器も同時に使えるなんて、楽園でしかない。
何かが足りないような気がして、もっともっとと焦る日もあるけれど。
僕たちは、もうすでに持っている。
幸せって、きっと、そういうことだと思う。
それに“気づく”ことが幸せの始まりなのかもしれない。

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妻の笑顔が見たくて、柄にもなく、宣伝なんてしちゃいました。
ごめんなさい。