季節と食卓– category –
季節がめぐるたびに変わる、わたしたちの食卓。その移ろいの中で見つけた風景や、食材にまつわる小さな物語を綴ります。
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遅めの唐辛子葉のナムル
― 季節のはざまに届いた、母からの手しごと ― 今年の唐辛子葉は、少し遅れて届きました。 例年なら、夏の終わりから初秋にかけて摘まれるはずの若葉たちが、今年は秋風が吹いてからようやくやってきたのです。 葉の色はいつもより濃く、小ぶりで、手のひら... -
大豆と米が教えてくれる、命のつながり
― 発酵の台所に宿る、祈りのような手しごと ― 大豆から生まれた、豆腐と味噌。米から生まれた、味醂と酒粕。 この一文を頭の中で繰り返すと、なんだか心が静かになります。 食べ物が、ただの「栄養」ではなく、大地と人をつなぐ命の循環だということを思い... -
高菜キムチ、갓김치(カッキムチ)との対話
種を蒔くところからはじまった、手づくりの物語 韓国に行くと、毎回食卓に「謎の葉っぱのキムチ」がありました。 見た目は地味なのに、ひと口食べると驚くほど深い旨みと香り。 何度も何度も食べるうちに、このキムチの正体が気になって仕方がなくなりまし... -
薬飯を炊きたくなる季節
秋の恵みと、私を豊かにしてくれる食べもの 秋が深まると、畑の根菜たちが力強く育ってきます。 にんじん、大根、ごぼう、れんこん。 土の中で静かに育ってきた野菜たちが、ようやく地上に顔を出して、台所へやってきます。 そして同じように、木の実も豊... -
水キムチで冷麺を
― 発酵の涼しさで、残暑を楽しむ ― 夏が終わる気配がしてきても、日中はまだ、じっとりと汗ばむ日が続きます。 そんな日の昼ごはんはできるだけ火を使いたくない。 でも、ちゃんと美味しいものが食べたい。 そう思って冷蔵庫から出したのは水キムチ。 冷麺... -
地上と地下、ひとつの蓮の不思議
― 光と闇をともに抱える植物 ― 地上と地下。それは、まるで別の世界。 太陽が燦々と降り注ぎ、風が吹き抜ける場所にいるのは、広く大きな蓮の葉と、凛と咲く蓮の花。 一方で、地中深く、空気も光も届かない、真っ黒な泥の中に潜んでいるのは、蓮根(れんこ... -
ドンチミとは?冬に仕込む韓国の水キムチと、母のやさしい即席レシピ
ドンチミとは?|韓国の水キムチ、そのやさしい発酵のかたち 韓国の冬に欠かせない発酵料理、それが「ドンチミ(동치미)」です。 乳酸菌の力でじっくりと発酵した大根の水キムチは、すっきりとした酸味とみずみずしさが特徴で、まるで“飲む美容液”のよう... -
秋の雨と、ちぎる手と、スジェビと。
台風が通り過ぎた日、母の言葉を思い出す 日本列島を台風が暴走し始めた。 9月のそれは、年明けにヤンチャな若者たちが朝日に向かってバイクで走るように、毎年の恒例行事のようにやってくる。 そのたびに果物を育てている夫は、胃が痛くなるらしい。 無理... -
夏にしか食べない、私のコングクス
洗脳と文化と、リアカーのおじさんの味 私が小さい頃、朝になるとリアカーで豆腐や豆乳を売りに来るおじさんがいた。 今で言うところの、キッチンカーのようなもの。 「朝出来立てだよ」 と言って渡してくれた豆乳は、温かくて、豆の香ばしい香りがふわっ... -
だから私は、今日もごはんを作る
特別だった“あの料理”と、母の習慣 子どもの頃、あまり外食をした記憶がない。 いつも家で、母が作ったごはんを食べていた。 「外で食べる」という選択肢がなかった そんなふうに育った私は、今でもあまり「今日は惣菜で済まそう」とか、「外に食べに行こ...
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