香りで思い出すことって、ありませんか?
味よりも先に心に届くのは、台所からふわっと漂ってくる“あの香り”。
火を入れた瞬間のごま油、刻んだにんにく、炊きたてのごはん─
どれも、誰かのために台所に立っていた人の姿を思い出させてくれます。
今日は、そんな「香りの記憶」としてのごま油について、小さな思い出とともに綴ってみたいと思います。

ごま油の香りが、記憶を呼び起こす
ふとした瞬間に漂う香ばしいごま油の香り。
それだけで私は、小さな頃の台所を思い出します。
母がフライパンを温め、ごま油をひとさじ。
じゅっと音を立てた瞬間、部屋いっぱいに広がるその香りが、今日のごはんが「特別」だということを教えてくれました。
子どもの頃の誕生日。
「誕生日には何が食べたい?」
と両親に聞かれた私は、当時はなかなか高級だった卵をたくさん食べたいと思い、大好きだった甘辛く味付けした目玉焼きをお腹いっぱい食べたいとリクエストしました。
誕生日当日の朝、台所からは香ばしいゴマ油の香りと、甘辛いタレがフライパンで焼ける匂いで目が覚めました。
食卓につくと、焼け上がったばかりの香ばしい香りがする目玉焼きがたくさんあり、私が食べ続けていても尚、目玉焼きを焼き続ける両親
その日は朝だけで、その目玉焼きを12個も食べました。
小さな頃の思い出ですが、今でもその時の香りは鮮明に覚えています。
料理の味よりも先に、香りが心に届く─そんな体験、あなたにもきっとあるはずです。
ごま油は“香り”という名の調味料

韓国料理では、「味」と同じくらい「香り」が大切にされます。
特にごま油は、その代表格。
仕上げにひとさじ加えるだけで、
料理が変わる

ナムルやスープ、ごはんに和えるだけでも、香ばしさが立ち上がり、一気に韓国の食卓に早変わりします。
火を通さず、最後にひとさじ加えるだけ。
これが、香りを活かす最大のポイントです。
母から子へ受け継がれる“使いどころ”

我が家では
「ごま油は炒め油じゃなく、香りの仕上げに」
と教えられてきました。
実際、炒めすぎると香りは飛んでしまいます。母の知恵とは、理にかなったものなのです。
調味料は“記憶をつなぐ道具”でもある

何気なく使っている調味料。
けれどそれは、家庭の味をつくり出す鍵であり、思い出を引き出すスイッチでもあります。
ごま油の瓶を開けたとき、
あなたは誰のことを思い出しますか?
どんな景色が浮かびますか?
調味料には、言葉にできない記憶と、心のあたたかさが染みこんでいると、私は思うのです。

本格的だけど、やさしい。
そんな韓国料理を伝えたい

料理教室では、ただ美味しく作るだけではなく、「なぜこの調味料を使うのか」「どんな順番で入れるといいのか」という背景も丁寧にお伝えしています。
それは、母から娘へ、家庭の台所で交わされてきたような、静かであたたかなやりとりに近いかもしれません。
料理の味は、記憶と一緒に作られる

「料理は香りが最初のごあいさつ」
そんな言葉があります。
ごま油の香りが広がるだけで、心がふっとほぐれるのは、きっと記憶のどこかでその味を知っているから。
料理教室では、そんな“記憶の味”を丁寧に紡ぐような時間を、大切にしています。
レシピだけではなく、香りや記憶ごと届くような料理を、教室でお伝えしています。
よろしければ一緒に台所に立ってみませんか?
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調味料は、単なる「味つけ」の道具ではありません。
そこには、家庭の知恵とやさしさが詰まっています。
もし、あなたの台所にもごま油があったら、今日はひとさじだけそっと加えてみてください。
香りがあなたの記憶をたどり、食卓を少しだけ、やさしくしてくれるかもしれません。