高松利行– Author –

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子育て中でも、自分に戻れる時間がほしかった|料理教室という小さな逃避行
「わたし、何してたんだっけ?」 これは、waktak cooking classに来てくださったある生徒さんが、帰り際にふと漏らした言葉です。 食べさせて、片付けて、寝かせて、起きて。 今日が火曜か木曜かも曖昧なまま、1日が終わっていく。 それでも家族のために台... -
チャージャン麺の夜、誰かと食べるごはんが、少しだけ特別に見えた日
最近息子は、週に一度、近所の中学生に勉強を教えてもらっている。その日の夕方も、少し大人っぽくなった声が玄関から聞こえた。 何事にも物怖じしない息子は、誰も遊び相手がいなくて近所をプラプラ歩いていたところに、昨年小学校を卒業した近所の女の子... -
子どもが親から離れるとき|寂しさと喜びの間で揺れる父親のエッセイ
「明日は家族で大凧合戦観にいこう!」 午前中に息子とそう約束したはずだった。 でも夕方になり、「明日、◯◯くんと遊ぶ約束してきた!」と、まっすぐに僕を見る息子がいる。 約束はあっけなく破られる。 自由な息子は、その時一番楽しいことを最優先する... -
冷たくて温かい、妻の冷麺
「冷麺って、なんか味がない」そう思ったことはありませんか? 正直、僕もずっとそう感じていました。 最初に韓国で食べた冷麺は、まるで薄まったポカリのように、ほんのり香るだけのスープ。 どこか物足りなくて、この料理に対してあまり良い印象を持って... -
お弁当をひらく日のこと
料理教室のある日は、妻がお弁当を作ってくれます。 保温ポットに入った、三段のドカベン。 なんだかお弁当が嬉しくて、実は少し早めに昼休みに入るのが習慣になっています。 今日のお弁当は、 ごぼうのピリ辛焼き、ゆで卵、ゆでたブロッコリー。白ごはん... -
記憶をたどらなくても、味は帰ってくる
忘れてしまった記憶を、料理がそっと呼び起こすことがある。 この日、妻は延吉の味を思いがけず思い出した。 玄関で息子を見送った朝。 いつものように仕事の話になったのだけど、その日は、妻の声に少し熱がこもっていた。 「日本に来てもう20年以上も経... -
怒ってしまった翌朝に、起きたこと
怒ってしまったあとは、こどもよりも、自分のほうが落ち込んでいることがある。 今回は特に、僕はひどく落ち込んだのだった。 あのとき、あんなふうに言わなくてよかったのに。もう少しだけ、信じて待ってあげればよかったのに。 何度そう思っても、また怒... -
自由な子と、待てない父と
子育てをしていると、「わかってるのに、また怒ってしまった」と思うことがある。 冷静でいたい、優しくしたい、信じて見守りたい─ そう思っているはずなのに、現実はうまくいかない。 どうして、怒ってしまうんだろう。どうして、うまく向き合えないんだ... -
「休まない先生」と呼ばれて─夫だけが知っている、料理教室の舞台裏
─夫である僕から見た、料理教室の舞台裏 彼女は、仕事を休まない。 熱があっても、腰が痛くても、目の下にクマができていても、僕が「今日はやめて寝てなよ」と言っても、「大丈夫」と言って立ち上がる。 「体壊すって」と返すと、ちょっとだけムッとした...
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