季節と食卓– category –
季節がめぐるたびに変わる、わたしたちの食卓。その移ろいの中で見つけた風景や、食材にまつわる小さな物語を綴ります。
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冷たくて温かい、妻の冷麺
「冷麺って、なんか味がない」そう思ったことはありませんか? 正直、僕もずっとそう感じていました。 最初に韓国で食べた冷麺は、まるで薄まったポカリのように、ほんのり香るだけのスープ。 どこか物足りなくて、この料理に対してあまり良い印象を持って... -
お弁当をひらく日のこと
料理教室のある日は、妻がお弁当を作ってくれます。 保温ポットに入った、三段のドカベン。 なんだかお弁当が嬉しくて、実は少し早めに昼休みに入るのが習慣になっています。 今日のお弁当は、 ごぼうのピリ辛焼き、ゆで卵、ゆでたブロッコリー。白ごはん... -
新じゃがいもの季節に、笑顔がこぼれる食卓
皮がうすく、みずみずしい。この季節だけの新じゃが。 小さな丸いじゃがいもが運んでくる、季節のたより そろそろ、新じゃがの季節です。 皮がやわらかくて、ほんのりと土の香りがして。 台所に立つと春から初夏への移ろいを感じさせてくれます。 いつもな... -
平壌冷麺の静けさに、わたしを重ねる午後
涼やかな午後に寄り添うひと皿の静けさ 冷たい麺に澄んだスープをそっと注いだとき。その静けさに、胸の奥がすっと整っていくような気がすることがあります。 平壌冷麺は、にぎやかさとは無縁の料理です。 スープも、具材も、語りすぎない。けれど、そっと... -
夏になると、あの香りがしてくる。オイキムチと、台所の記憶
「オイキムチ」とは、韓国の夏を代表するきゅうりのキムチ。漬けた瞬間に広がる香りは、台所から夏の訪れを知らせてくれます。 この記事では、オイキムチの意味や作り方、その香りにまつわる記憶を綴っています。 夏の始まりを知らせる、きゅうりの香り ス... -
遅めの唐辛子葉のナムル
― 季節のはざまに届いた、母からの手しごと ― 今年の唐辛子葉は、少し遅れて届きました。 例年なら、夏の終わりから初秋にかけて摘まれるはずの若葉たちが、今年は秋風が吹いてからようやくやってきたのです。 葉の色はいつもより濃く、小ぶりで、手のひら... -
大豆と米が教えてくれる、命のつながり
― 発酵の台所に宿る、祈りのような手しごと ― 大豆から生まれた、豆腐と味噌。米から生まれた、味醂と酒粕。 この一文を頭の中で繰り返すと、なんだか心が静かになります。 食べ物が、ただの「栄養」ではなく、大地と人をつなぐ命の循環だということを思い... -
高菜キムチ、갓김치(カッキムチ)との対話
種を蒔くところからはじまった、手づくりの物語 韓国に行くと、毎回食卓に「謎の葉っぱのキムチ」がありました。 見た目は地味なのに、ひと口食べると驚くほど深い旨みと香り。 何度も何度も食べるうちに、このキムチの正体が気になって仕方がなくなりまし... -
薬飯を炊きたくなる季節
秋の恵みと、私を豊かにしてくれる食べもの 秋が深まると、畑の根菜たちが力強く育ってきます。 にんじん、大根、ごぼう、れんこん。 土の中で静かに育ってきた野菜たちが、ようやく地上に顔を出して、台所へやってきます。 そして同じように、木の実も豊... -
水キムチで冷麺を
― 発酵の涼しさで、残暑を楽しむ ― 夏が終わる気配がしてきても、日中はまだ、じっとりと汗ばむ日が続きます。 そんな日の昼ごはんはできるだけ火を使いたくない。 でも、ちゃんと美味しいものが食べたい。 そう思って冷蔵庫から出したのは水キムチ。 冷麺...
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