
小さな丸いじゃがいもが運んでくる、
季節のたより
そろそろ、新じゃがの季節です。
皮がやわらかくて、
ほんのりと土の香りがして。
台所に立つと春から初夏への移ろいを感じさせてくれます。
いつもなら味噌汁や煮物に使っていたじゃがいもも、この時期だけは特別に思えてしまう。
そんな不思議な力があります。
ごま油の香りと、
シャキシャキの口あたり
旬の新じゃがをナムルに仕立てると、驚くほど軽やかな一皿になります。
シャキッとした歯ごたえを残しながら、ごま油の香りがふわっと広がると、まるで食卓が初夏の風に吹かれたような気持ちになります。
「こんなナムル、食べたことない」
生徒さんのそんな一言が、とても嬉しかったです。
ふだん目にする野菜も、ほんの少し切り方や火の通し方を変えるだけで、驚くほど新しい表情を見せてくれる。
それが料理の面白さであり、韓国の家庭料理の懐の深さでもあるのだと、あらためて感じました。

揚げたてのコロッケに、
ほっとする夕方
そして、新じゃがといえば─ 夫が作ってくれるコロッケが、何よりの楽しみです。
たっぷりの油をまとってカラッと揚がったパン粉の香ばしさ。
ひとくち頬張ると、しっとり甘いじゃがいもがふわっと広がって、外のサクサクと絶妙なコントラストを奏でます。

「美味しい、美味しすぎる……」
そう言いながら夢中で食べる私を見て、夫はにやにやしながらこう言います。
「喜んで食べてくれるって、ほんと嬉しいね」
作ってくれる人と、食べる人のあいだに流れる、目に見えない優しさのようなもの。
台所にはそんな時間がちゃんと存在していて、 それを感じられることが、どんなごちそうよりも贅沢だと思うのです。
誕生日にリクエストするもの
6月生まれの私。
今年は夫にこのコロッケをリクエストしました。
今では息子の分まで加わって、作る数はいつもの倍以上。
夫は段取りよく、せっせと揚げ続けます。
お皿に山盛りのコロッケが並ぶと、家中に香ばしい匂いが満ちて、まるで祝福のような空気になります。
揚げ音と笑い声が交差する夕方。
それは我が家にとって、小さな季節の祭りのようなものです。
じゃがいもで、なに作る?
新じゃがいもを見ると、みなさんはどんな料理を思い浮かべますか?
ポテトサラダ、
煮っころがし、
フライドポテト…
どれもその家、その人らしさがにじみ出る一皿になる気がします。
季節が運んできてくれた小さな恵みを、大切な人と分かち合うこと。
その時間こそが、日々の暮らしにそっと花を咲かせてくれるのだと思います。
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