
韓国の僧侶に教わった、
心を整える料理
このタンスユクは、韓国のお坊さんから教わったものです。
タンスユクというと、韓国風の酢豚といった印象ですが、お坊さんが精進料理にアレンジしたものを教わりました。
お坊さんのレシピでは、お肉の代わりに肉厚のシイタケを使います。
それはまるで、お肉の旨味や食感を丁寧に言い換えたような存在感で、食べる人の気持ちまで静かに整えてくれる味でした。
けれど今回は、夫・高松のリクエストで、お肉を使ったアレンジに。
いや、アレンジというか元に戻したのですね笑
日々の暮らしは、その日の気分や声に寄り添って少しずつ変わっていくものですね。
紫キャベツのピンクが伝えるやさしさ
このタンスユクの餡には、ほんのりとしたピンク色をつけています。
その色は、紫キャベツから抽出した天然の色。
どこか地味に感じられる精進料理を、目にも鮮やかに整える工夫は、あの僧侶のやさしい心遣いから学んだものです。
「食べる」という行為は、ただ栄養を摂るだけではない。
感情や環境、季節や出来事と一緒に、料理は変化する。
それを教えてくれたのもそのお坊さんでした。

日常にひそむ、食のメッセージ
たとえば——
ニンニクやネギなどの香味野菜は、陽の力が強く、心を落ち着けたいときにはなるべく控える。
髪を切ったあとは、気が抜けている状態だから、それを補う食べ物を選ぶとよい。
どれも昔からの智慧で、どこか見過ごしてしまいそうな当たり前のこと。
でも、日常を静かに見つめてみると、こんなふうに「食べること」が、私たちの心や体を支えていることに気づきます。
献立は、いちばん身近な贈り物
家族や大切な人、自分自身の声に耳をすませて、その日その時にふさわしい料理をつくる。
それは何気ないようでいて、とても大切な行為だと思うのです。
たとえば
「今日はちょっと疲れてるみたいだから、にんにくはやめよう」とか、
「髪を切ったから、あたたかいスープにしよう」とか。
献立を考えることは、相手を想うこと。
それはきっと、小さなプレゼントです。
このタンスユクが、私にくれたもの
このレシピと出会ったことで、私は料理との向き合い方に、もう一つの扉が開いたように感じました。
単なる味付けやテクニックではなく、もっと深いところで、
「今、何を食べたいか」
「どう生きたいか」
に繋がるような料理。
タンスユクという名前のこの料理が、私にくれたものは、きっと“食べる”ことの本当の意味を、静かに問う時間だったのだと思います。