ひかり– Author –

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お母さんのキンパが、いちばん美味しい
― 味の記憶と、安心というスパイス ― 韓国に行くと、私たちはいつもソウル市内に住む姉の家に泊まらせてもらっています。 そこには姉と、彼女の娘と息子、そして単身赴任中の義兄が、週末になると帰ってきます。 賑やかで、あたたかい家族の空気に、私たち... -
秋の雨と、ちぎる手と、スジェビと。
台風が通り過ぎた日、母の言葉を思い出す 日本列島を台風が暴走し始めた。 9月のそれは、年明けにヤンチャな若者たちが朝日に向かってバイクで走るように、毎年の恒例行事のようにやってくる。 そのたびに果物を育てている夫は、胃が痛くなるらしい。 無理... -
夏にしか食べない、私のコングクス
洗脳と文化と、リアカーのおじさんの味 私が小さい頃、朝になるとリアカーで豆腐や豆乳を売りに来るおじさんがいた。 今で言うところの、キッチンカーのようなもの。 「朝出来立てだよ」 と言って渡してくれた豆乳は、温かくて、豆の香ばしい香りがふわっ... -
春、ニラの香りと父のトラウマ
― 農業1年目、私たちの原点 ― 私たちが農家になったのは、2013年のこと。 親が農家だったわけでもなく、親戚にも農家はいない(祖母が中国で農家をしていたけれど)。つまり、私たちは完全に“農家1代目”だった。 梨農家からのスタート 就農当初は梨農家と... -
チュンムキンパとは?韓国・漁師町に生まれた“具なしキンパ”の優しさ
チュンムキンパとは、韓国・忠武(チュンム)で生まれた“具なしのキンパ”。 そのシンプルさの裏には、家族を思うやさしさが込められていました。 国を越えて、懐かしい料理と私の問い 韓国料理の講師をしているとはいえ、実は私がまだ出会ったことのない韓... -
豆もやしは、ごちそうだった
祖母の壺と、母の知恵と、私の後悔 実は、私の祖母の家も農家だった。 私がまだ子どもだった頃、冬休みや長い休みになるたびに祖母の家に行くのが恒例だった。 その記憶は今も強烈に、私の頭と心に残っている。 農家は大変な仕事だと、両親は知っていた 祖... -
ジャガイモチヂミは、「時間」を食べる料理
― 母が焼き続けた、出来立ての愛情 ― この料理も、母が作ってくれて印象に残っているもののひとつだ。 ジャガイモチヂミ。 母は、座らない この料理が食卓に並ぶ時、母が座ることは、まずない。 「出来立てが美味しいから」と言って、ずっとキッチンで焼き... -
スンドゥブチゲの香りからはじまった
― 食べる女から、作る女へ ― ある日、私の住んでいた場所の近所に、スンドゥブチゲ専門店ができた。 その店の前を通るたび、香ばしくて、ちょっと刺激的な辛味の香りがふわりと鼻をくすぐる。 その香りを、私は今でもはっきりと覚えている。 「匂い」は、... -
だから私は、今日もごはんを作る
特別だった“あの料理”と、母の習慣 子どもの頃、あまり外食をした記憶がない。 いつも家で、母が作ったごはんを食べていた。 「外で食べる」という選択肢がなかった そんなふうに育った私は、今でもあまり「今日は惣菜で済まそう」とか、「外に食べに行こ... -
チャプチェは、面倒くさいがうまいのだ
手間と笑いと、家族の「そうこなくっちゃ」 チャプチェは、作りたてが一番うまい。 これはもう、声を大にして言いたい。そして同時に、こうも言いたい。 チャプチェは、意外に手間がかかる。 一緒に炒めて一緒に味付け? そんなはずがない チャプチェとい...