家族の記憶– category –
母の味、父との会話、子どもの笑顔。台所の片隅に積み重なる、家族の記憶をたどるエッセイ集。
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お盆を前に、命のことを考える。
今週のアトリエには、リアトリスやアスタ、ジニアといった花を飾っています。季節の花々に囲まれながら、ふと「もうすぐお盆だな」と感じました。 そんなとき、家族3人の日記帳に書かれていた夫の言葉が目にとまりました。 大昔、ローマ時代にこんな実験が... -
見た草が、花になるとき
経験の有無は、人生の豊かさにつながっていく気がします。 今週のアトリエには、リアトリスの盆花をはじめ、夫の畑のりんごの枝や、道ばたのエノコログサ(猫じゃらし)などを使って、佐藤さゆり先生が生けてくださいました。 季節や土地の旬を、花を通じ... -
ゆかりを作る夏、育てられる台所
今日は、今年最後の梅しごと。息子と一緒に「ゆかり」を作りました。 「俺、ゆかり作ってみたかった」そう言った息子のひと言に、私はびっくりして、そして嬉しくなりました。 ジリジリと照りつける夏の太陽のおかげで、赤紫蘇はちょうどよく乾いていて、... -
海がこわいと言っていた息子と、家族で向かった“思い出の海”
「今年の夏は、どこに行きたい?」 すると迷いもなく、「プール行きたい。だって、海こわいんだもん……」と返ってきた息子。 昨年は、何度もレジャープールに通い、波の出るプールや流れるプールではたっぷり遊んでいたけれど、肝心のウォータースライダー... -
ぼくのレシピ、ママとつくる夏休み
息子の夏休みが始まりました。 1ヶ月まるまる家にいるのは、正直とても長い。でも、自由気ままに生きる彼と過ごせるこの1ヶ月は、もしかしたら人生で数えるほどしかない希少な時間なのかもしれません。きっと、気づいた時にはもう、どこか遠くへ行ってし... -
僕は、その小さなおにぎりに、勝てない。
その日はなぜか朝5時前に、息子がひとりで着替えを済ませてリビングにやってきた。 いつもは僕や妻に起こされて、メガネをはずしたのび太くんみたいな目で、ぼーっとしたまま夢と現実を行ったり来たりしている彼が、なぜかその日だけはシャキッと起きて、... -
僕たちは、もうすでに持っている
先日から、気楽にやっている家族の交換日記。その中に、笑顔の奥に隠れていた妻の本当の言葉が書かれていた。 「集客がなかなかうまくいかなくて、ママは落ち込んでいます」 今日はどんなことが書いてあるのかな…と気軽に見た僕はちょっとドキッとしてしま... -
出前の夜に囲んだ「団欒」の味を、いま台所から
「オモニ、私たちって家族で中国にいる時にチャンポン食べたことありますか?」 そう聞いたとき、母は即答でした。「ないよ。外食なんかしなかったからね」 その一言で、私の記憶がふっとソウルの夜に飛びました。 私が初めて“ちゃんぽん”を食べたのは、ソ... -
風邪をひいて気づいた、小さな異変と大きな感謝
風邪の日に、ようやく立ち止まる 両親の来日。大きな寒暖差。母と毎日続いた試作作り。慣れない東京ひとり出張。 最初はいつもの寒暖差アレルギーかな?なんて思っていたのに…。 久しぶりの風邪でした。 熱もなく咳も出ず、くしゃみと鼻水と倦怠感。 「あ... -
アボジとオモニ、ありがとう─父と母が帰る朝に
誰かを見送る日は、なぜこんなにも空気が静かに感じられるのでしょうか。 忙しかった日々の名残が、ふとした瞬間にこみあげてきて、 あれも話せばよかったな、もっと一緒にいればよかったな と、小さな後悔が優しい感謝に変わっていきます。 今日、私の両...