家族の記憶– category –
母の味、父との会話、子どもの笑顔。台所の片隅に積み重なる、家族の記憶をたどるエッセイ集。
-
風邪をひいて気づいた、小さな異変と大きな感謝
風邪の日に、ようやく立ち止まる 両親の来日。大きな寒暖差。母と毎日続いた試作作り。慣れない東京ひとり出張。 最初はいつもの寒暖差アレルギーかな?なんて思っていたのに…。 久しぶりの風邪でした。 熱もなく咳も出ず、くしゃみと鼻水と倦怠感。 「あ... -
アボジとオモニ、ありがとう─父と母が帰る朝に
誰かを見送る日は、なぜこんなにも空気が静かに感じられるのでしょうか。 忙しかった日々の名残が、ふとした瞬間にこみあげてきて、 あれも話せばよかったな、もっと一緒にいればよかったな と、小さな後悔が優しい感謝に変わっていきます。 今日、私の両... -
おこげとお茶漬けがつなぐ記憶
朝、少しだけ冷えた台所で、ふと湯気の立つお茶漬けが恋しくなるとき、ありませんか? 忙しい日でも、心を整えてくれるのは案外こんな“なんでもない料理”だったりするものです。 わたしが日本に来たばかりのころ、不思議なくらいお茶漬けに惹かれました。 ... -
「ママァ〜」の声にイラッとしてしまう私へ。
「ママァ〜、ママァ〜?」が、優しく聞こえる日まで。 5月に入ってから、私は一度も休んでいない気がしている。 いつもより早く目が覚めるのは、心が休まっていない証拠かもしれない。 体内時計より早く起き、まだ薄暗い部屋で目が覚め、しばらくぼんやり... -
食べるものの好みって、いつ決まるのでしょう?
「食べるものの好みって、いつ決まるのでしょう?」 ある日、ふと、そんなことを考えました。きっかけは、父とのささやかなやりとりです。 父は、決まったものしか食べない人 私の父は、昔から食に対して頑固な人でした。その傾向は、年齢を重ねるごとによ... -
失敗から生まれるやさしい味|母と挑んだペクソルギ
料理がうまくいかない日って、ありますよね でも、そんな日は、なぜか心の奥に深く残ったりします。 今日は、母と二人で挑んだ餅作りの、ちょっと失敗した、でもかけがえのない一日のことをお話しします。 「ごはん」が「餅」に変わる魔法 子どものころ、... -
母の饅頭、想像の味。
「お母さんの料理、最後に一緒に作ったのはいつですか?」 そんな問いかけに、少し戸惑ってしまう人もいるかもしれません。私も、つい最近まで思い出せませんでした。 でも今日は、母と一緒に饅頭を作りました。 目分量と「大丈夫」のあいだ 両親は今、二... -
鉄釜のごはんと母の背中
ごはんの匂いで目が覚めた朝 父は朝起きたら必ず窓を全開にしていました。 せっかく布団が暖かいのに、外から入ってくるその寒さがいつも嫌で、まだ寝ていたいのにと布団の中でしばらく丸まる。 そんな朝、まだ目が覚めきらないうちに台所から聞こえる「シ... -
キムチは保存食ではなく、家庭の手紙だった
あなたにとってキムチとはどんな存在ですか? 食卓の定番、発酵食品、季節の味。 どれも正解だけれど、私にとってキムチは、母から届く“言葉のいらない手紙”のようなものでした。 寒くなる季節に、そっと心を温めてくれるその味を、今日はひとつの思い出と... -
忘れそうになった実家の味
旅の終わりに見つけた、母のソンマッ(손맛) 実家に帰るたびに「何食べたい?」と母が聞いてくれる。 けれど最近は「なんでもいいよ」と答えてしまうことが多くなった。 あれもこれも、もう何度も食べた味だから。 なのに、ふとある瞬間、それを“忘れそうに...
12