家族の記憶– category –
母の味、父との会話、子どもの笑顔。台所の片隅に積み重なる、家族の記憶をたどるエッセイ集。
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鮑粥という、やさしいごちそう
家族の味に宿る、強さとぬくもり 韓国旅、姉がわざわざ息子のためにつくってくれていたひと皿。 それが、鮑粥(あわびがゆ)でした。 細かく切られた鮑が丁寧に火を入れられ、ご飯でとろみのある優しい出汁の中にすっかり馴染んでいました。 ひとくちすく... -
私はシルトクが好きです
幼少期からアラフォーになってもなお 私はシルトクが好きです。 ずっと前から。 幼少期から、食べるたびに「おいしいな」と思っていましたが、アラフォーになった今あらためて「やっぱりこれが好きだな」と思います。 そもそも、シルトクって? このブログ... -
お母さんのキンパが、いちばん美味しい
― 味の記憶と、安心というスパイス ― 韓国に行くと、私たちはいつもソウル市内に住む姉の家に泊まらせてもらっています。 そこには姉と、彼女の娘と息子、そして単身赴任中の義兄が、週末になると帰ってきます。 賑やかで、あたたかい家族の空気に、私たち... -
春、ニラの香りと父のトラウマ
― 農業1年目、私たちの原点 ― 私たちが農家になったのは、2013年のこと。 親が農家だったわけでもなく、親戚にも農家はいない(祖母が中国で農家をしていたけれど)。つまり、私たちは完全に“農家1代目”だった。 梨農家からのスタート 就農当初は梨農家と... -
豆もやしは、ごちそうだった
祖母の壺と、母の知恵と、私の後悔 実は、私の祖母の家も農家だった。 私がまだ子どもだった頃、冬休みや長い休みになるたびに祖母の家に行くのが恒例だった。 その記憶は今も強烈に、私の頭と心に残っている。 農家は大変な仕事だと、両親は知っていた 祖... -
ジャガイモチヂミは、「時間」を食べる料理
― 母が焼き続けた、出来立ての愛情 ― この料理も、母が作ってくれて印象に残っているもののひとつだ。 ジャガイモチヂミ。 母は、座らない この料理が食卓に並ぶ時、母が座ることは、まずない。 「出来立てが美味しいから」と言って、ずっとキッチンで焼き... -
スンドゥブチゲの香りからはじまった
― 食べる女から、作る女へ ― ある日、私の住んでいた場所の近所に、スンドゥブチゲ専門店ができた。 その店の前を通るたび、香ばしくて、ちょっと刺激的な辛味の香りがふわりと鼻をくすぐる。 その香りを、私は今でもはっきりと覚えている。 「匂い」は、... -
チャプチェは、面倒くさいがうまいのだ
手間と笑いと、家族の「そうこなくっちゃ」 チャプチェは、作りたてが一番うまい。 これはもう、声を大にして言いたい。そして同時に、こうも言いたい。 チャプチェは、意外に手間がかかる。 一緒に炒めて一緒に味付け? そんなはずがない チャプチェとい... -
ジョンは、季節を並べる料理
―「食べる人」から「作る人」へ ― ジョンは、いつも食卓に並んでいた。 ズッキーニのジョン、トウモロコシのジョン、ジャガイモのジョン、白菜のジョン。 それぞれが季節の香りをまとい、その時その時の“旬”を並べる料理だった。 とても庶民的で、とても贅...
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