凍沈(ドンチミ)と母の即席水キムチ

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― 四季と知恵に寄り添う、韓国の味と想い ―

韓国料理を支えているもの。
それは、やっぱり「キムチ」だと私は思います。

種類も、漬け方も、味わいもさまざま。
でも、そのひとつひとつに、季節や体調、人との関わり方が込められていて、
料理以上の“文化”を感じさせてくれます。


美容液のような水キムチ、そして私にとってのドンチミ

最近では、日本でも「水キムチ」が美容や健康に良いと注目されていますね。
“飲む美容液”と呼ばれるほどのそのすっきりした味わいは、
乳酸発酵がもたらす自然の力のたまものです。

私にとって、水キムチといえば「凍沈(ドンチミ)」。
小さい頃、母がよく漬けてくれました。


凍った季節にこそおいしい、大根の水キムチ

ドンチミは、漢字の通り「凍る沈む」。
寒さが深まる冬、畑で育った韓国の大根(チョンガクムなど)は、
寒さから身を守るために糖分を蓄えます。

その甘みと香りを、塩だけで引き出し、発酵させるのがドンチミ。

まるごとの大根を塩水で漬けてじっくり育てたこの水キムチは、
本当にすっきりしていて、ピリッとしつつも、まろやかで優しい味。

冷麺のスープにするのも一般的ですが、
実は、焼き芋と一緒に食べるのも最高のご馳走なんです。


通年で楽しみたいからこそ、母の即席ドンチミ

……とはいえ、
人の欲とは「美味しいものは一年中食べたい」というもの。

母も、そんな気持ちを抱いていたのかもしれません。
寒くない時期でも水キムチを楽しめるように、
即席で作れるよう工夫してくれたのが、「大根と豆もやしのドンチミ」でした。

私が豆もやしが大好きだったからかもしれません。
(豆もやしについては、また改めて語りたいほどの思い出があります)


即席ドンチミの作り方と、そのやさしさ

母の即席水キムチは、こんなふうに作ります。

  1. 米の研ぎ汁を沸かし、
  2. 豆もやしとなつめを加えて火を通し、
  3. 塩を加えて冷ます。
  4. スライスした大根はあらかじめ塩漬け。
  5. ニンニクと生姜を加えて発酵を促す。

少し時間を置くだけで、
爽やかで優しい酸味と甘みがふわっと広がる、夏のごちそうに早変わり。

「ああ、美味しい」
口に含むたびに、体が整っていくような感覚がありました。


先人たちの知恵に、心から感嘆する

こうした料理を思い出すたび、私は先人たちへの尊敬の念が湧いてきます。

季節の恵みを活かし、
保存性を高め、
味わいを引き出しながら、
理にかなった方法で食文化を築いてきた人たち

そして、それを身近で実践していた母。

凍沈からはじまり、豆もやしドンチミへと展開させたその発想力に、
今思えば、料理人としての先見性と、家族を思う愛情が詰まっていました。


「この人に美味しく食べてほしい」という想いから

母の工夫は、きっと私が豆もやしを好きだったから。
家族の誰かが「美味しい」と言ってくれる顔を思い浮かべながら、
その手が自然と動いていたのだと思います。

そう考えると、料理にとって一番大切なのは、
その人を思う気持ちなのかもしれません。


まとめ|母のキムチと共に、今も台所に立つ

今日も、私は家族や料理教室の生徒さんと向き合って料理をしています。
レシピだけではなく、そこに込められた「誰かへの想い」も一緒に伝えられたらと願いながら。

凍沈(ドンチミ)も、即席水キムチも、
その味わいの向こう側にあるのは、
母の手と、心と、暮らしでした。

私もまた、そんな料理を作っていけたらと思います。

白菜キャラ

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この記事を書いた人

ひかりのアバター ひかり waktak cooking class講師

ひかり
韓国家庭料理教室「waktak cooking class」主宰。
中国東北部・朝鮮族の家庭で育ち、祖母や母から“家庭の味”の奥深さを学びました。

いまは新潟で、小さな台所から料理の記憶を伝えています。
香りや湯気とともに、記憶に残る家庭を、もう一度つくるように。

レッスンのことや日々の気づきは、InstagramやLINEでもお届けしています。

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