経験の有無は、人生の豊かさにつながっていく気がします。

今週のアトリエには、リアトリスの盆花をはじめ、夫の畑のりんごの枝や、道ばたのエノコログサ(猫じゃらし)などを使って、佐藤さゆり先生が生けてくださいました。
季節や土地の旬を、花を通じて感じていただけたら。
そんな想いで、できるだけアトリエの近くにある植物を選ぶようにしています。
そして何より、花屋さんの整った花よりも、少し野性味があって、自由に動きのあるその姿に、私はとても美しさを感じています。
時々、先端が枯れている葉っぱもあったりして…。
それだって、この土地の「今」を表現しているようで、愛おしく思えるのです。

ある日、その花を飾っていると、息子がふと、エノコログサにそっと触れました。
「飾っている花は触ってはダメだよ」
普段はそう言っているのですが、息子が触ったその形跡もまた、このアトリエを飾ってくれているような気がして、その時は息子が優しく触れる様子を、ただ見守ることにしました。

夏休みの朝、神社にお参りに行って、帰り道に拾ったエノコログサを自分の自転車に挿して飾る息子。
「ママにプレゼント」
とススキを摘んでくれたり、お正月には道端に落ちている杉の枝を拾ってきてくれたこともあります。
自分の家に、日常を飾っている。
そんな記憶が、ちゃんと残っているんだなと感じました。
遊びの中でふれてきた草を、今度は「花」として認識している——
その変化に、私はとても嬉しくなりました。
見る、
ふれる、
遊ぶ、
飾る。
経験のひとつひとつが、感性を育てていくのだと感じます。
“日常”は、見方ひとつで“特別”なものに変わるのだと。
私にとっては日常の料理や食材。
でも、生徒さんにとっては初めての出会いとなることもあります。

最近では、ニラの花を塩漬けにしたものを副菜としてお出ししています。
父が日常で食べていた味。私にとってもそれは“当たり前”のものでした。
でも、ここではそれが「はじめて出会う味」として迎えられる。
誰かの日常が、誰かの特別になる——
そんな瞬間を、教室では何度も見ています。
初めての食材、知ってはいたけれど口にしたことのない味。
そんな“はじめて”に出会える機会を、料理教室でも大切にしています。
誰かの中で、ふと何かがつながるような、そんな体験が生まれたらうれしいです。

waktak cooking classでは、季節の副菜や特別な一皿とともに、「初めての感覚」と出会う料理体験をご用意しています。
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