御先祖様に感謝のお参りを終え、我が家業は本格的に冬の支度をはじめました。

キムチ用の白菜、大根、からし菜。
息子が大好きなブロッコリー、そして私がひそかに愛してやまないパクチー。
畑にはまた、新たな場所へと移植されたニラが根を張ろうとしています。
「ニラ」――庶民の味方の野菜。
たかがニラ、されどニラ。
畑でその青々とした姿を見るたびに、私は胸が熱くなり、涙ぐんでしまいます。
そんな時、Instagramで見つけた、韓国の第二国歌として親しまれているある曲を聴きました。
何度も何度も聴きながら今、涙でパソコンの画面を滲ませながらこの文章を書いています。
思い出すのは13年前。
夫と二人、果樹園を“ゼロ”…いや、マイナスから始めた頃。
生活に困り果てていた私たちに、農協の担当者が「ニラを作ってみないか」と声をかけてくれました。
栽培の経験もなく、ただ「回転が早ければ生活費の足しになるだろう」と、迷う間もなく挑戦しました。
けれども、先人の言葉通り、簡単なものは何ひとつありませんでした。
虫がつき、収穫が遅れ、選別に追われる。
時には他の仕事まで手が回らなくなり、途方に暮れる日もありました。
それでも「いいニラを作りたい」「買ってくださる方に喜んでほしい」――そんな想いだけを頼りに、畑に向かい続けました。
やがて少しずつ、お客様に喜んでいただけるようになり、スーパーからも定期的な注文をいただけるように。
「참 아름다운 많은 꿈이 있는, 이 땅에 태어나서 행복한 내가 아니냐(真に美しい多くの夢がある、この地に生まれて幸福な私ではないか)」
その歌の一節のように、私の人生にも小さな希望の芽がひとつ、確かに育っていきました。

ニラは、私にキムチを漬ける力もくれました。
ニラキムチに、白菜キムチの具としてのニラ。
さらに今では、可憐なニラの穂までも料理に生かしています。
「겨울 눈꽃이 오롯이 앉으면, 그 포근한 흰빛이 센 바람도 재우니(冬に雪の花が降りれば、その柔らかな白い光が強い風をも眠らせる)」
雪に包まれる冬も、ニラは静かに大地に根を張り、私たちの暮らしを守ってきました。

畑が遠くなった今も、来春の移植をどうしようかとつぶやけば、夫は無言で鍬を大地に突き立ててくれる。
その姿には、私の料理への応援と、生徒さんに喜んでもらいたいという願いが映し出されています。
振り返れば、ニラはずっと私と共にありました。
食べることすら困った日々には生活費として。
息子が生まれたときには、キムチ文化を継ぐアイデンティティとして。
そして今、料理家として歩む私には、食材として力を貸してくれています。
「큰 추위로 견뎌낸 나무의 뿌리가, 봄 그리운 맘으로 푸르다(大きな寒さに耐え抜いた木の根が、春を恋う心で青く染まる)」
まさにその通り。
寒さに耐えたからこそ、今の青さがある。
私の暮らしもまた、そうして育ってきました。
ニラよ。
これからも一緒に年を重ねていこう。
食卓に集う人たちに、感動と勇気を届けていこう。
「아름다운 나라, 아름다운 사람(美しい国、美しい人)」
その歌のように、私の暮らしにも、静かで確かな美しさがありますように。
台所から、やさしさを取り戻す時間を
私が大切にしているのは、特別なごちそうよりも、日々の中で心をととのえる食卓です。
オンラインレッスン「waktak cooking class」では、そんな暮らしに寄り添う韓国家庭料理を毎月お届けしています。
- 毎月一度のライブレッスン(Instagram鍵アカウントでアーカイブ視聴可)
- 季節の副菜や調味料を学べる小さな動画やコラム
- レッスンに合わせて届くレシピ冊子と、ポストに届く乾物調味料
息子と一緒に食べるスジェビのように、あたたかくやさしい料理の時間を、あなたの暮らしにも。