
野菜嫌いの子どもに、
春巻きという名の魔法を。
「子どもが野菜を食べないんです……」
アトリエにいらっしゃる生徒さんの多くが、そんな悩みを抱えています。
私もかつて、同じでした。
わが家の息子は水も野菜も苦手。
お通じがスムーズにいかず、トイレのたびに苦戦する日々……。
そんなある日、ふと思い出したのは、生まれ育った中国で食べていた「煎餅(ジエンビン)」という料理でした。
小麦粉やトウモロコシ粉の薄い生地で、季節の野菜やおかずを包んで食べる家庭の味。
どんな具材もふんわり包み込んでくれる、あの寛容さ。
それと重なったのが、義理の母がよく作ってくれた春巻きでした。
もやしと豚肉、片栗粉でとろみをつけた餡を、丁寧に巻いて揚げる。
あの香ばしい匂いが立ち上ると、食卓がパッと明るくなったものです。
そして今。
私自身の感性と、旬の野菜の美しさを活かして、「子どもも笑顔に、母も満たされる春巻き」をつくってみようと思ったのです。
カリッと揚げて、ふんわり蒸す。
春巻きの包容力。
春巻きは、ほんとうに寛大な料理です。
どんな季節野菜もすんなり受け入れてくれて、外はカリッと、中はやさしく蒸し上げる。
——しかも、それが“野菜嫌いの子ども”にも人気なんだから驚きです。
今回使ったのは、新潟の旬の恵み。

- とうもろこし
- グリーンピース
- ブルーベリー
- ラズベリー
ブルーベリーやラズベリーの代わりに、一年中スーパーで買えるものはないかと考えて、アメリカンチェリーでも試してみました。
鮮やかな3色丼をイメージした色合いで、甘さと酸味のバランスも◎。
農園で育てた経験のある野菜たちだからこそ、調理のイメージも自然に浮かびました。
揚げたての春巻きを割ると、ふわっと立ちのぼる甘酸っぱい香り。
「これ、おかずになるの?」と疑いたくなるほど可愛らしく、でもしっかり美味しい。
ちょっと甘い。
だから、酸味が恋しくなる。
春巻きを揚げたあとにふと思ったのは——
「もう少し酸味がほしいかも」
そこで思い出したのが、タンスユク(韓国風酢豚)の甘酸っぱいソースでした。

このソースを春巻きにディップする?
いや、タンスユクを春巻きの具にしてみる?
いっそ、ベリーやチェリーではなくて、パイナップルを組み合わせてみる?
だって、酢豚にパイナップル入れたりするよね?
私の頭の中では、テトリスのように色々な料理や食材が「カチカチ」と音を立てて組み合わさっていきます。
その感覚がとても楽しくて、いつまでも台所とスーパーや直売所の往復をして1日があっという間に過ぎていきます。
甘さの中にある、酸味のアクセント。
これは、暑い季節にこそ食べたい味わいです。
試作はどんどん広がっていきます。
▶︎タンスユクについてはこちらの記事で

子どもが笑うと、大人も嬉しい。

料理って、誰かの“困った”を解決できる力がある。
生徒さんが笑ってくれて、子どもが「おいしい!」って言ってくれて、そんな小さな感動が、私の背中を押してくれます。
春巻きという名の魔法。
これからも季節の野菜をたっぷり抱きしめながら、
アトリエに訪れる誰かの食卓に、そっと届けていきたいと思っています。
旬の野菜で春巻きを作ってみませんか?

レッスンでは、旬の野菜の扱い方や、子どもが喜ぶ食べ方の工夫などもご紹介しています。
野菜を“義務”ではなく、“喜び”に変えていく台所の時間。
よろしければ、あなたの暮らしにも、春巻きの優しさを添えてみてください。
▶︎季節のレッスンはこちら
