― 父の記憶と、母のスープ ―
あなたは大人になってから好きになった料理ってありますか?
私はたくさんあります。
お餅、あんこ、野菜、アルコール……
昔はそれほど惹かれなかった味が、今では心から「美味しい」と思えるようになりました。
そんな中でも、今日は「キムチコンナムルスープ」についてお話ししたいと思います。
このスープの本当の美味しさを、私は大人になってようやく知った気がするのです。
父と、二日酔いと、あのスープ

私の父は、お酒が好きな人でした。
社会人として中国で長く働いていた父にとって、お酒の席は日常の一部。
にぎやかな晩の翌朝、必ず母にリクエストするのがこのスープでした。
「キムチコンナムルスープ、お願い」
そう言う父の声と、それに手慣れた様子で鍋を火にかける母の姿。
今思えば、あのスープには家族の暮らしがぎゅっと詰まっていたように思います。

簡単だけど深い。沁みる味の秘密
このスープは、とてもシンプルです。
出汁にキムチ汁を加え、豆もやしと豆腐を煮込むだけ。
けれど、その組み合わせがなんとも絶妙で、全身にじんわり沁みていくような味に仕上がるのです。
魚醤やアミエビの旨味が加わることで、味わいはさらに奥行きを増し、仕上げの唐辛子で、辛さと香りに輪郭が立ちます。

「体が欲しがる味」って、
こういうことかもしれない
私は子どもの頃、このスープを見てもあまり心が動かなかった。
でも大人になって、疲れたときや季節の変わり目にふと飲んでみたら、体の奥から「これだよ」と言われた気がしたんです。
体が必要とする味というのは、舌だけでなく、心や記憶ともつながっているのかもしれません。
レシピ|キムチコンナムルスープ
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キムチコンナムルスープ
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◾️作りやすい分量(2〜3人分)
・出汁・・・・・・・・・800ml
・キムチ汁・・・・・・・200ml
(ない場合は魚醤で味を調整する)
・魚醤・・・・・・・・・小さじ1
(ナンプラーでもOK)
・アミエビ・・・・・・・小さじ1
・木綿豆腐・・・・・・・1/2丁
・豆もやし・・・・・・・1袋(200g)
・唐辛子(粗びき)・・・適量
◾️作り方の手順
①鍋に分量の出汁を入れて一回沸騰させる。

②①にキムチ汁を加えて再度煮立たせる。

③魚醤とアミエビを加え、味を整える。
(味見は大事)

④③に豆もやし、豆腐を加え、唐辛子を振り、2分ほど煮込み完成。

■ポイント
- 出汁の生臭さを取るために一回沸騰させる。
- キムチ汁がなかったら魚醤やナンプラでも代用できます。
- 好みでみじん切りニンニクを加えたり、ご飯を入れてグッパにしても美味しいです。
今日の気分に、沁みる一杯を
料理は、単なる味だけではないと思います。
それは誰かの記憶だったり、心や体の調子に寄り添ってくれる、ちょっとした薬のような存在だったりする。
このキムチコンナムルスープは、私にとってまさにそんな一杯。
今日の気分に沁みる味が欲しくなったら、ぜひ思い出して作ってみてください。
