台所に立つとき、いちばん悩むのは「味つけ」かもしれません。
塩が多すぎたかな、砂糖が足りないかな、レシピ通りにしてるのに、なんだか決まらない——。
でも、waktakでは、そんなときにこそ「無理をしない味つけ」を思い出すようにしています。
正解を探すより、“整う”感覚を育ててみる

料理がうまくなりたい。そう思う気持ちはとても自然なこと。
でも、うまくなることは、必ずしも「きっちりレシピ通りにすること」ではないのだと思います。
たとえば、味噌汁の塩加減。
その日の体調や、他のおかずとのバランス、家族の好み……。
一度「今日の味」を決めてしまえば、もうそれが「正解」になります。
そういうふうに、自分の感覚を信じて味つけをすることを、私たちは「自然体の味つけ」と呼んでいます。
「整っている」料理は、やさしい

韓国料理では、五味五色を大切にします。
甘・塩・酸・苦・辛、それぞれが整っているとき、人の体は「安心」するのだそうです。
それは、薬膳のように理屈で学ぶこともできますが、もっと感覚的なもので——
ひとくち食べた瞬間、「あ、今日のこれはちょうどいい」と思える。
それは、“無理のない味”ということでもあります。
食材の声を聞くように、調味料を足していく。
しょっぱさや甘さではなく、「整っている」ことを感じ取る。
それが、自然体の味つけです。
味が決まらない日は、まず深呼吸してみる

不思議ですが、味が決まらないときというのは、頭が忙しくなっているときが多いです。
「ちゃんと作らなきゃ」「家族においしいって言わせなきゃ」と自分を追い込んでいませんか?
そんな日は、レシピを見る前に、台所で一度だけ深呼吸してみてください。
そして、鍋の中を見て、「この子たちは何を欲しがってるかな?」と聞いてみてください。
私も、何度もその深呼吸に救われてきました。
ごま油と塩、だけでおいしいと感じたとき

とても忙しかった日のお昼ごはん。
夫はおらず、私ひとりだけ。
もう料理をする気力もなくて、ごはんにごま油と塩だけだけをかけて食べました。
料理とも言えないような、シンプルな一膳。
むしろ、料理をしたくなくて作ったようなものです。
でも、この組み合わせが「今日の私」にぴったりだと感じたとき、
それはたぶん、いちばん贅沢な味になるのだと思います。
実際、本当に美味しかった。
自然体の味つけは、今日の自分と台所の間に、そっと橋をかけてくれる存在です。
無理しない味が、心と体のバランスを整えてくれます。
レシピでは伝えきれない「味」の話

料理教室でも、味つけに悩む声はよく聞きます。
でも、教室では「何グラム入れればいいか」よりも、「どうしたら今日の一皿が整うか」を一緒に探していきます。
一応、レシピを作って分量はお伝えしています。
教室でもその通りに料理を作ってみます。
大事なことをその後。
家族は薄味が好きだから。あの人は濃い味付けが好きだから。あの人はこの匂いが苦手だから。
そんな風にして、自分や大切な人のことを考えながら味を整えていくことが、家庭料理なのだと思います。
季節の素材や、自家製の調味料、ちょっとした味見のコツ——
そんな会話の中から、生徒さんが自然に「整える感覚」を身につけていくのを見るのが、私のいちばんの喜びです。