
夏の始まりにぴったりの韓国風酢豚「タンスユク」。台湾パインやピーマンを使った、甘酸っぱくてちょっと懐かしい一皿。味と記憶をめぐる、小さな台所の物語です。
「梅雨も明けたかな?」
そう思うくらい、今年は雨の少ない6月でした。
気づけば空気は夏の匂い。
陽ざしは真っすぐで、野菜も果物も、色を濃くしていく。
こんな暑い日が続くと、不思議と酸っぱいものが食べたくなります。
身体が自然と欲しがるのです。
疲れた体を、やさしく起こすような酸味と甘み。
辛味がほんの少し加われば、それはもう立派な“ごちそう”になります。
そんな日のわが家の食卓には、タンスユクが並びました。
タンスユク。
韓国風の甘酢豚です。
▶︎タンスユクについてはこちらの記事で

私が初めて“タンスユク”に出会ったのは、韓国・ソウルでした。
外食をあまりしなかった私にとって、それは初めての「配達で届く揚げ物料理」。
サクサクの衣をまとった豚肉と、別添えの甘酸っぱいタレ。
チャンポンと一緒に届いたそのセットは、韓国では“配達料理の定番”だと教えてもらいました。
たっぷり入ったタレに、「こんなに要らない…」と思いながらも、ひと口食べたそのときのことは、今でも忘れられません。
あの時からずっと、「自分でちょうどいいバランスで、好きな素材で、作ってみたい」という気持ちが、心のどこかに残っていたのだと思います。
スーパーで見かけた台湾パイン。
糖度が高く、手頃な価格で手に入ったのがうれしくて、今日はこれを、甘みのベースにしようと決めました。
隣のおばあちゃんからいただいたピーマンもある。
もう、タンスユクを作るしかない。
パインの酸味と甘み、
ピーマンの青くささとシャクシャクとした歯ざわり、
そして、揚げたての豚肉に少しだけまとわせたあのタレ。
──あぁ、やっぱりタンスユクって、夏の記憶の味ですね。
\ 夏の台所にぴったりのもう一皿 /
▶ ししとうと甘唐辛子のサムジャン和え

料理というのは、誰と食べたかも、どう感じたかも、全部ひっくるめて“味”になります。
今年もまた、美味しく食べて、ひとつの季節をちゃんと味わえたことがうれしかった。
きっと来年の夏も、台湾パインとピーマンを見るたびに思い出すのでしょうね。
あの甘酸っぱくて、ちょっと嬉しい一皿を。
▶ キッチンで味わう、韓国の季節料理を学ぶオンラインレッスン

この夏の思い出が、食卓から始まりますように。
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