火を入れた瞬間に、思い出が立ち上がる

強火で熱した鍋に、ごま油を落とした瞬間。
ぱちっと音がして、ふわっと香りが立ちのぼる。
目の前にあるのは、ただの野菜かもしれない。
でもその香りは、子どものころの食卓や、台所に立つ母の背中、「早く座りなさい」と言う声まで、全部思い出させてくれる。
香りって、味よりも先に心に届くものなんですね。

香りは“味”より先に、心に届くもの

人の記憶に、もっとも深く残るのは「香り」だと聞いたことがあります。
だから「美味しそう」と思う瞬間は、味ではなくて、香りが先に働きかけているのかもしれません。
ごま油のあたたかい香り、にんにくの食欲をくすぐる匂い。
それらはどれも、「ごはんができるよ」の合図のようなもの。
香りは、家庭のキッチンから始まる優しい合図なのだと思います。
韓国料理の香りは、“暮らし”の香り

韓国料理に欠かせないのは、香りの力強さです。
にんにくの香り、唐辛子のほのかな刺激、醤油が熱で焦げて生まれる香ばしさ。
どれも、特別な日ではなく「いつものごはん」のための香り。
私の息子は夫高松がつくるチャーハンが世界一美味しいと言います。
高温で炒めた火の香り。
最後にほんの少しだけ焦がしながら混ぜる醤油の香り。
そして、軽く火を通すだけの長ネギの香りと甘さ。
具は卵と長ネギだけ。
味付けもとても薄味のそのチャーハンは、香りが豊かで、それだけで満足感のあるチャーハンとなり、息子にとっての世界一美味しいチャーハンとなれるのです。
家庭料理には、「食べてほしい人がいる」という喜びが込められていて、香りもまた、暮らしの大切な一部なのだと思います。
記憶に寄り添う、わたしの台所

あなたにも、ありますか?
「この香りをかぐと、あの人を思い出す」という瞬間。
毎日立っていたキッチン、台所の音、調味料の香り。
それら全部が、暮らしの中で積み重ねてきた“記憶”のかたち。
料理は、味だけじゃない。
香りも、音も、手の動きも、ぜんぶが記憶に染み込んでいて、家族の中に、ずっと残り続けるものなのかもしれません。

料理が少しでも好きな方、家庭の味をもっと大切にしたい方へ。
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