ひかり– Author –

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鮑粥という、やさしいごちそう
家族の味に宿る、強さとぬくもり 韓国旅、姉がわざわざ息子のためにつくってくれていたひと皿。 それが、鮑粥(あわびがゆ)でした。 細かく切られた鮑が丁寧に火を入れられ、ご飯でとろみのある優しい出汁の中にすっかり馴染んでいました。 ひとくちすく... -
高菜キムチ、갓김치(カッキムチ)との対話
種を蒔くところからはじまった、手づくりの物語 韓国に行くと、毎回食卓に「謎の葉っぱのキムチ」がありました。 見た目は地味なのに、ひと口食べると驚くほど深い旨みと香り。 何度も何度も食べるうちに、このキムチの正体が気になって仕方がなくなりまし... -
母から受け継いだ、我が家のキムチ|感覚でつなぐ家庭の味
キムチの味は、母の記憶とともにあった キムチというと、どんなイメージを思い浮かべますか? 辛くて発酵した香り、白いごはんによく合うおかず、韓国料理に欠かせない存在──そんな印象が一般的かもしれません。 でも私にとってのキムチは、「家庭の記憶」... -
なつめ茶の時間
― 季節の風と、ひとくちの甘さ ― 風が少し冷たくなってきて、窓を開けると肌にふれる空気が心地いい午後。 そんな日には、なつめ茶を淹れたくなります。 ポコポコと湯気が立ちのぼる鍋の中、乾燥したなつめが、ゆっくりとやわらかくなっていく。 やがてほ... -
薬飯を炊きたくなる季節
秋の恵みと、私を豊かにしてくれる食べもの 秋が深まると、畑の根菜たちが力強く育ってきます。 にんじん、大根、ごぼう、れんこん。 土の中で静かに育ってきた野菜たちが、ようやく地上に顔を出して、台所へやってきます。 そして同じように、木の実も豊... -
ししとうは、ご縁の味
― 辛さもやさしさも、自然のままに ― ししとうが出回る季節になると、つい買い物かごに入れてしまいます。 理由はとても単純で、あの、たまに当たる「辛いししとう」が好きだから。 いつもはやさしい味なのに、たまにびっくりするような辛さが混じっている... -
水キムチで冷麺を
― 発酵の涼しさで、残暑を楽しむ ― 夏が終わる気配がしてきても、日中はまだ、じっとりと汗ばむ日が続きます。 そんな日の昼ごはんはできるだけ火を使いたくない。 でも、ちゃんと美味しいものが食べたい。 そう思って冷蔵庫から出したのは水キムチ。 冷麺... -
地上と地下、ひとつの蓮の不思議
― 光と闇をともに抱える植物 ― 地上と地下。それは、まるで別の世界。 太陽が燦々と降り注ぎ、風が吹き抜ける場所にいるのは、広く大きな蓮の葉と、凛と咲く蓮の花。 一方で、地中深く、空気も光も届かない、真っ黒な泥の中に潜んでいるのは、蓮根(れんこ... -
キムチコンナムルスープ|大人になって知った、沁みる味
― 父の記憶と、母のスープ ― あなたは大人になってから好きになった料理ってありますか? 私はたくさんあります。 お餅、あんこ、野菜、アルコール…… 昔はそれほど惹かれなかった味が、今では心から「美味しい」と思えるようになりました。 そんな中でも、... -
キムチクリームパスタで、思い込みが一皿ひっくり返った日
想いのある料理に境界線はいらない 「固定概念にとらわれてはいけない」 そんなこと、頭ではわかっているはずなのに、気づくと、ついその枠の中で物事を見てしまいます。 その一例が、昨日のキムチクリームパスタ。 正直、驚きました。 「え、こんなに簡単...