
― 手間と笑いと、家族の「そうこなくっちゃ」 ―
チャプチェは、作りたてが一番うまい。
これはもう、声を大にして言いたい。
そして同時に、こうも言いたい。
チャプチェは、意外に手間がかかる。
一緒に炒めて一緒に味付け? そんなはずがない
チャプチェというのは不思議な料理で、具材をそれぞれ細切りにしたあと、全部を別々に炒め、別々に味付けする。
いやもう、焼きそばみたいに、全部一緒に炒めて、「はい、出来上がり〜!」ってできたらどんなに楽か。
でも、チャプチェはそうはさせてくれない。
昔の人、面倒なことしてくれたよね
いったい誰がこんな作り方にしたのか。
昔の人は、なんでこんなに真面目で、丁寧なんだ。
具材それぞれを個別に炒め、調味料もそれぞれ違う。
一体何種類の鍋を使えばいいんだと思うけど、
そうしてできたチャプチェは、やっぱりとてもおいしい。
親戚総動員でつくる、チャプチェ・フェス
だから、チャプチェを作るときは親戚総動員だ。
みんなで包丁を持ち、にんじん、玉ねぎ、ピーマン、春雨、牛肉…それぞれが役割をもって、次から次へと炒めていく。
その光景は、ちょっとしたフェスのようだ。
そして当然ながら、できあがったチャプチェの量も尋常じゃない。
味見が止まらない問題
そんな大量のチャプチェを前にすると、親戚たちはなぜか“味見”と称して食べ始める。
最初は「ちょっとだけね」なんて言いながら、次第に“味見”が本番に。
気づけば、ボウルいっぱいあったはずのチャプチェは、いつの間にかちょこんとした小皿1つ分に。
団長安田がミニマラソンでスタートダッシュするみたいに
この現象を見て思い出すのが、TBS『オールスター感謝祭』の赤坂ミニマラソンだ。
スタートダッシュだけやたら早い、安田大サーカスの団長。
毎回そうなのに、毎回笑ってしまう。
チャプチェも同じで、「作っても食べきる前に無くなる」という展開が、わかっているのに、なんだか嬉しい。
「そうこなくっちゃ」が、家族の文化
チャプチェは、手間がかかる料理だ。
でも、その手間を分担しながら作り、作りたてをちょこちょこ味見しながら、結局できあがる頃には量が減っていて、それを見てまた笑う。
その流れまで含めて、チャプチェなのだ。
そして、それが私たちの家族の文化であり、「そうこなくっちゃ」と思える流れなのだ。
