冷蔵庫に並ぶ小皿は、思いやりの記録

韓国の家庭料理には、小さなおかずがいくつも並びます。
それは「たくさん作る」のではなく、「少しずつ作って、少しずつ残す」文化。
キムチ、ナムル、炒め物……
冷蔵庫の中にびんやタッパーがいくつもあって、今日の食卓にはそれを並べるだけ。
でも、それはただの時短じゃない。
「今日、あなたが食べるものを、昨日のわたしが用意しておいたよ」
そんな思いの積み重ねなのだと思うのです。
私は、仕事柄常にキッチンに立っていて、夫も自営業です。
だから、あまり冷蔵庫に常備菜を用意しているわけではありません。
それでも母がしてくれたように、テーブルいっぱいにパンチャン(副菜)を並べたいという想いは変わりません。
だから、季節のキムチ類や漬物は常に常備していて、いつでも冷蔵庫から出せるようにしてあります。
準備は、愛情のかたち

常備菜を作るのは、誰かを思いながらの時間。
「お昼ひとりだから気持ちが晴れるように」
「疲れているようだから、消化のいいものを」
特別な料理じゃないけれど、毎日の食事にそっと手を添えるような、そんな存在。
だからこそ、
「おいしい」と言われなくても、
「ありがとう」と言われなくても、
台所の時間は続いていくのかもしれません。
でも、やっぱり「おいしい」と言って欲しくて、「これどう?」いつも聞いちゃうんですけどね笑
常備菜の数だけ、家庭の物語がある

教室でも、「このおかず、子どもが大好きで…」という話をよく聞きます。
味つけや食材の組み合わせに、家族の好みや過ごしてきた季節がにじんでいて、聞いているだけであたたかくなる。
ナムルひとつとっても、塩とごま油だけのものもあれば、にんにくをきかせたり、粉唐辛子をまぶしたり。
生徒さんにナムルの作り方をお伝えするとき、
「ナムルに必ずにんにく入れると思ってました」
と言われることがあります。
どれが“正解”ではなくて、その家にとっての“ふつう”が、そのまま宝物なのだと思います。
私がお伝えしているのは、私にとっての“ふつう”で、そこから生徒さんの“ふつう”を作れるお手伝いができれば嬉しいです。

レッスンで伝えているのは
「味」だけじゃない

waktak cooking classでは、そんな日々の「仕込み」や「保存」の知恵も、レッスンの中で自然にお伝えしています。
『常備菜』レッスンでは、まさにこのミッパンチャン(常備菜)をお伝えするクラスです。
普段使いできるジャン(タレ)を3種類と、我が家定番のおかずや、レッスンで好評だった副菜6種を丁寧にお伝えします。
火を使わず作れるものもあるので、朝の支度にも重宝しますよ。
▼過去のレッスンはこちらから

ちいさな一皿が、
家族の“会話”になる日もある

「これ、昨日と違う味がするね」
「これ、前にも食べたよね」
「これ、また作ってほしいな」
そんな会話が、食卓に自然に生まれる。
常備菜は、作る人の手間を減らすものではなく、家族の時間を増やしてくれるものなのかもしれません。