
― 発酵の涼しさで、残暑を楽しむ ―
夏が終わる気配がしてきても、日中はまだ、じっとりと汗ばむ日が続きます。
そんな日の昼ごはんはできるだけ火を使いたくない。
でも、ちゃんと美味しいものが食べたい。
そう思って冷蔵庫から出したのは水キムチ。
冷麺のスープ代わりにしてみよう、と、ふと思いついたのです。

「飲めるキムチ」とも言われる、
水キムチ

韓国では古くから親しまれてきた水キムチ。
唐辛子を控えめにして、野菜や果物を漬け込んだ、あっさりとした発酵液です。
乳酸発酵によってじんわりと酸味が出てきて、
暑い日にはそのスープだけでゴクゴク飲みたくなるほど。
「飲むキムチ」とも呼ばれるのは、きっとそのせいですね。
新潟の野菜と果物で、我が家の味に
この日の水キムチは、新潟の畑でとれたきゅうり、にんじん、大根、そこに少しだけりんごとなしを加えて、やさしい甘みをつけました。
果物の香りがほんのり漂って、乳酸発酵の酸味と出汁の旨味が合わさって、なんとも言えないまろやかな涼しさ。
この水キムチを、冷麺のスープとして使ってみたら……
正解でした。

食べても美味しい、飲んでも美味しい
ゆでた冷麺に、たっぷりの水キムチスープを注ぎ、具として、漬け込んだ野菜をそのままのせる。
仕上げに氷をひとつ浮かべて冷たさをキープ。
一口すすると、身体が「ありがとう」と言っているような心地よさ。
ほんのり酸っぱく、でも優しい。
夏の終わりにぴったりの、ご褒美のような一皿になりました。
発酵は、「涼しさ」も育ててくれる
水キムチの魅力は、味だけではありません。
手間をかけすぎず、素材の力を引き出してくれるところ。
冷蔵庫で育てながら、数日後の楽しみに変わっていく過程もまた、台所のささやかな発酵の物語です。
こういう食の知恵があること、そしてそれを今、自分の手で受け取れることが、なんだかとても嬉しく感じられるのです。
残暑もまた、味わいのひとつ
暑さが名残惜しくなるような季節のはざま。
その時間も、発酵の力で涼やかに過ごすことができるのなら、残暑もまた、楽しみのひとつになる気がします。
冷たい水キムチで冷麺を。
今日も台所に、小さな喜びが広がりました。