ワクタクの手しごと
3.Umeboshi / 梅干し

地域の風土を味わう、昔ながらの梅干し
ワクタクは、農業からはじまりました。
農作物を育て、収穫し、それを加工し、その加工品を食べてもらうために料理をし、その料理を家庭でも作れるように料理教室をする。
すべての活動の原点は、「農」にあります。

テロワールを梅干しに込めて
私たちの根本にある考え方が「テロワール」。
ワインの世界で使われる言葉ですが、地域の風土、その年の気候、育った土地の力を、人の手で発酵・熟成させて表現するという意味です。
ワクタクの梅干しも、まさにそのテロワールの結晶です。
原料は、梅・塩・赤紫蘇だけ
使う素材はとてもシンプル。
梅、塩、赤紫蘇の3つだけ。
しかし、同じ材料・同じ工程でも、毎年まったく同じ味にはなりません。
それは、
- 梅が育ったその年の気候や土壌、
- 梅を漬けるときの温度や湿度、
- 干すときの天気、
- そして熟成の具合まで——
自然の条件がすべて異なるからです。
ワインにヴィンテージがあるように、「この年の梅干しは美味しいね」と語れるような梅干しを、私たちは目指しています。
なにも施さない、樹上完熟の梅

梅しごとは、冬の剪定から始まります。
10年以上、肥料・農薬・堆肥を一切使わず、自然の力に委ねた梅の樹たち。
主役はあくまで梅の樹であり、人間は必要最低限の手を入れるだけ。
完熟した梅は、果肉がとろっとジューシー。
香りはまるで杏のようで、皮は薄く繊細です。
収穫のタイミングは、梅畑に香りが広がる頃。
一粒ずつ、丁寧に手もぎしています。
自家製の梅酢で、ジューシーに

ワクタクでは、あらかじめ自家製の梅酢を仕込み、最初からその中に漬け込む方法を取っています。
こうすることで、より果肉がしっとりと、ジューシーに仕上がります。
ただしこの方法には、通常の2倍の梅が必要になります。
漬けるための梅酢を作る梅と、漬けられる梅。
贅沢な使い方ですが、自家栽培だからこそ実現できる手しごとです。
熟成という名の、時間の仕事

土用干しは、三日三晩。
昼も夜も、じっくりと太陽と夜露にあてながら、一粒ずつ丁寧に干し上げます。
干し終えた梅は再び赤紫蘇入りの梅酢に戻し、風土に任せて、最低でも半年以上の熟成へ。
この時間が、梅干しをまろやかに育ててくれます。
人工的な温度管理はせず、自然の温度と湿度にすべてを委ねる。
そうして出来上がる梅干しは、「いい塩梅」としか言いようのない、
その年・その土地・その手しごとの味となります。
ワクタクの梅干しは、

その年の風と土と、私たちの時間が詰まった一粒です。
