
想いのある料理に
境界線はいらない
「固定概念にとらわれてはいけない」
そんなこと、頭ではわかっているはずなのに、
気づくと、ついその枠の中で物事を見てしまいます。
その一例が、昨日のキムチクリームパスタ。
正直、驚きました。
「え、こんなに簡単で美味しいの?!」
思わず、自分の舌を疑ってしまうほどでした。
「キムチ×洋食」に対する偏見
雑誌で時々見かけるキムチパスタのレシピ。
目に止まりはしてもいつもスルーしていた私。
心のどこかで、
「洋食に無理やりキムチを加えてるだけじゃ…?」
と、勝手に疑っていたんです。
料理人としての好奇心よりも、固定概念の方が先に口を出してしまっていました。
そんな私の心を揺さぶった、
あるドキュメンタリー
ある日、たまたま観たキムチに関するドキュメンタリー。
登場したのは、「キムチ×ワイン」をコンセプトにしたレストラン。
- ドンチミチーズ
- キムチ天ぷら
- キムチパスタ
- バジルキムチ……
どれも想像をはるかに超えた料理ばかり。
けれど、どの皿にも共通していたのは、「キムチをもっと世界に届けたい」という強い想いでした。
画面越しからでも伝わるその熱意に、胸がキュンキュンしてしまったのです。
私も「日本の皆さんにキムチを親しんでもらいたい」一心でやってきたから。
この想いが、自分の心にまっすぐ響きました。

もう、じっとしていられない
気がつけば私はキッチンに立っていました。
私が漬けている白菜キムチと特製ヤンニョムを、ごま油で香ばしく炒める。
そこに魚醤と塩でほんの少し味を調えて、生クリームを加えると……
なんと、薄いピンク色のロゼソースに!
香りはキムチの個性を残しつつ、クリームでまろやかに包み込まれている。
これはいける。
お皿の上に起きた、小さな革命
茹でたパスタをソースに絡めて、仕上げにパルメザンチーズをふわっとかける。
色を引き立てたくて、黒いお皿を選びました。
夫に試食をお願いすると、
ひと口、ふた口、三口……
「美味い、いいじゃん、旨いよ!」
その褒め言葉に思わずこちらも満面の笑みに。
ああ、やってよかった。
想いがあれば、
料理は境界を超えていける
固定概念は、時に私たちを守ってくれるけれど、同時に可能性の芽を摘んでしまうこともある。
だけど、そこに
「届けたい」
「知ってほしい」
「喜んでほしい」
という想いがあれば、料理は枠を超えて、アイデアや革命や、ちょっとした奇跡を起こすことができる。
昨日のキムチクリームパスタは、私にとってそんな“革命”の味でした。
美味しかった。
そして、嬉しかった。
この一皿は、私の料理の歴史にしっかり刻まれました。