韓国の精進料理(사찰음식)は、野菜の持ち味を最大限に引き出す伝統的な料理です。
本記事では、中国・延吉で育った私の食の原風景と、韓国精進料理との出会い、
そして新潟での活動を通して感じた「自然とつながる料理」の魅力をお伝えします。
精進料理に興味のある方、野菜料理を学びたい方におすすめです。
延吉の野菜と、精進料理がつなぐもの

私が生まれ育った中国・延吉。
そこは、四季折々の野菜があふれる、自然に恵まれた地域でした。
春にはヨムチェ(山菜の一種)、つるにんじんの葉、桔梗の根。
夏には豆やトマト、とうもろこし。
秋には白菜や唐辛子。
冬は保存したキムチや根菜。
季節ごとに巡る野菜たちは、私にとって特別な存在ではなく、当たり前のように食卓に並ぶものでした。
けれど、大人になった今、その日々がどれほど贅沢だったかを思い知ります。
あの豊かな自然に囲まれ、野菜とともに暮らした時間こそが、私の「食の原風景」なのだと。
精進料理との出会いが教えてくれたこと

延吉での暮らしのあと、日本へ来てからのある日、ソウルに出向いた先で「韓国の精進料理教室」に出会いました。
動物性食材を使わず、野菜や乾物、穀類だけで構成されたその料理。
最初は正直、淡泊で地味な味だろうと思っていました。
けれど、目の前に並んだ料理は、どれも色とりどりで香り豊か。
食材の切り方、火の入れ方、盛り付け方ひとつで、野菜がこんなにも表情を変えることに驚かされました。
この出会いが、私の料理観を大きく変えた瞬間だったのです。
▶︎最初に出会った精進タンスユクはこちらの記事で

野菜は静かに語りかけてくる

私は10年以上、畑で野菜や果物を育ててきました。
農薬はなるべく使わず、風や光、雨の力を借りて育てる。
そうやって野菜と向き合う日々の中で、「生きているもの」と対話するような感覚を覚えることがあります。
種を蒔き、芽吹き、実る。
それは人間の手だけではどうにもできない、大きな自然のリズムの中にある営みです。
その野菜たちが、やがて台所へやってくる。
その時、私はどんなふうにこの命を調理するのかを、いつも考えます。
五観の偈──食の背景を思うということ

精進料理の中には、「五観の偈(ごかんのげ)」という考えがあります。
一、この食材がどこから来たのかを思う
二、自らがこの食にふさわしい存在かを省みる
三、欲や怒りの心を手放す
四、食事は薬であると心得る
五、この食を通じて道を学ぶ
この教えに出会ったとき、私は強く心を打たれました。
畑で日々、土に触れているからこそわかる「食材がここに届くまでの物語」。
それを思いながら台所に立つと、ただの調理ではない、静かな気持ちで野菜と向き合うことができるのです。
新潟の台所に、韓国精進料理の風が吹いた日

そんなある日、韓国の精進料理の大家・ジョン・グワン氏が新潟に来られ、私は通訳としてご一緒する機会をいただきました。
その日見たのは、言葉では語られない、料理に宿る静かな配慮。
野菜の声に耳を澄ませるように、一つひとつの食材と向き合い、やさしく丁寧に料理していく姿は、まさに「生き方そのもの」を感じさせるものでした。
その姿に、私は何度もうなずき、学び、背筋を正される思いがしました。
この出会いから、さらに韓国精進料理に魅せられ、実際にお寺で精進料理を召し上がっていただくイベントも開催できました。
▶︎その時の様子がこちらの記事です

制限が教えてくれた「自由」

精進料理は、「使えない食材」が多い料理です。
動物性食材はもちろん、五葷(ごくん)と呼ばれるにんにく、ねぎ、にら、らっきょう、玉ねぎも原則使いません。
けれどその制限の中でこそ、食材の力を引き出す工夫や知恵が育ちます。
たとえば、塩の加減や火の入り方ひとつで、野菜の甘みや香りがぐっと際立つ。
それは、レシピでは伝えきれない、感覚の料理です。
教室で生徒さんに伝えるときも、分量や手順だけでなく、「この野菜の声を聞いてみて」と言いたくなります。
台所から伝えたいこと

私は、野菜という存在にいつも助けられてきました。
疲れているとき、落ち込んでいるとき、季節の野菜が静かに体と心を整えてくれるのです。
それは、きっとあなたの食卓でも起こるはずです。
特別な食材じゃなくていい。
地元の野菜を、ていねいに切って、火を入れて、塩だけで味わってみる。
それだけで、どこかしら心がほぐれていくことがあります。
最後に

新潟の畑から、季節の野菜が届き、台所で精進の知恵を借りながら仕立てる。
そんな料理を、私は「waktak cooking class」で教えています。
もしもあなたが、食との向き合い方を見つめ直したいと感じたら、ぜひ私たちのレッスンにいらしてください。
この台所から、自然と人がつながる時間を、お届けできたらうれしいです。
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まずは、レッスンにご参加の前に、私が台所で思ったこと、気づきをLINEで受け取りませんか?