レシピ通りじゃない「おいしさ」を、教えるということ

「料理って、どうして人によって味が違うんだろう?」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?
同じレシピなのに、誰かの手でつくると、なぜかほっとする味になる──
今日は、そんな「味の不思議」と「教えること」のお話です。

目次

計る料理と、感じる料理のあいだで

料理教室をはじめて、3年以上が経ちました。
教室では毎回、すべての調味料を計量スプーンできちんと量り、レシピを印刷し、それに沿って進めています。

でも、私が本当の意味で「料理」を学んだのは、まったく逆のやり方でした。


キムチは、レシピじゃない

それは、母と一緒にキムチを漬けていたときのこと。
農地の真ん中にぽつんと建った小さな小屋。まだアトリエもなかった頃、私はそこに母を呼び、キムチづくりを学びました。

母はすべて「目分量」で作る人です。

塩はこのくらい。
魚醤は、もう少し。
唐辛子は、手にすくって、ふわっと。

「味見してみて、足りなかったら足すんだよ」

そう言って、母は笑っていました。


それを、私は計量した

プロとしてキムチを全国に届けるために、私はその「目分量の味」を数字に置き換える必要がありました。
毎回違う味では、商品として成り立たないからです。

だから私は、母の動きを横で見ながら、ひとつひとつをスプーンで測り、重さを量り、温度と時間を記録していきました。

そうやってできたのが、今の「ひかり母さんが育てたのキムチ」です。


それでも、野菜は変わる

春の白菜は甘く濃厚で、夏の白菜はさっぱりしている。
季節によって野菜の個性は違い、それによって味の仕上がりも変わってきます。

だから最後は、やっぱり「感覚」なのです。

この白菜は甘いから、甘みの調味料を減らそう。
この人参は香りが強いから、少しだけ魚醤を足そう。

経験があるからこそできる「ちょっとした調整」。
それこそが、家庭料理の醍醐味です。


では、なぜ料理教室では計量するのか?

私が教室で一つ一つの調味料をきっちり測るのは、「感覚」を育てるための“最初の基準”を伝えたいからです。

韓国料理に慣れていない日本の方にとって、味の「正解」がわからない状態で、いきなり目分量のレシピを出すのは酷です。
だからこそ、最初の一歩は“設計図”が必要だと思うのです。


レシピは、完成形ではなく「入口」

私は生徒さんにこう言います。

「レシピは、あくまで設計図。けれど、設計図がなければ家は建たない。」

ピカソがあの自由な絵を描けるのは、写実的なデッサンがとても上手だから。
それと同じように、自由な料理には、まず“型”が必要なのです。


感覚を育てるために、測る

家では大さじ小さじを出さず、目分量でつくる人も多いと思います。
でも、料理教室では、私がすべてを測ります。

なぜなら、その場で「この調味料が大さじ1なら、これくらいの甘さになるんだ」という“感覚”を育ててほしいから。

五感を使って、覚えてほしいのです。


レシピの先にあるもの

生徒さんの中には、最初はぎこちなくレシピを追っていた方が、半年もすると目分量で料理をするようになります。
「先生、今日はレシピ見ないで作ってみました!」と報告してくれることも。

それが、嬉しくてたまらないのです。

料理は、最初から感覚だけでできるものではありません。
でも、レシピという道しるべを通って、いつしかその人の中に「自分の味覚」という地図ができていく。


料理教室の本当の目的

ただ料理を習う場所じゃない。
ただレシピを覚える場所じゃない。

その人がもともと持っている味覚を引き出すこと。
そして、いつか大切な誰かのために、記憶に残る料理をつくれるようになること。

それこそが、私が目指している「料理教室」です。


あなたの料理にも、“物語”がある

塩をふる手の迷いが、なくなった日。
それは、あなた自身の感覚が芽生えた日かもしれません。

その瞬間を、私はずっと見届けたいと思っています。


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この記事を書いた人

ひかりのアバター ひかり waktak cooking class講師

ひかり
韓国家庭料理教室「waktak cooking class」主宰。
中国東北部・朝鮮族の家庭で育ち、祖母や母から“家庭の味”の奥深さを学びました。

いまは新潟で、小さな台所から料理の記憶を伝えています。
香りや湯気とともに、記憶に残る家庭を、もう一度つくるように。

レッスンのことや日々の気づきは、InstagramやLINEでもお届けしています。

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