
「オイキムチ」とは、韓国の夏を代表するきゅうりのキムチ。
漬けた瞬間に広がる香りは、台所から夏の訪れを知らせてくれます。
この記事では、オイキムチの意味や作り方、その香りにまつわる記憶を綴っています。
夏の始まりを知らせる、
きゅうりの香り
スーパーに初物のきゅうりが並びはじめると、私の中では「そろそろオイキムチを仕込もうかな」というスイッチが入ります。
包丁を入れたときの、あの青くさくてみずみずしい香り。
そこに、にんにくやニラ、唐辛子の香りが重なって──台所には、まるで夏の扉が開いたかのような空気が満ちていきます。
韓国の食卓では、夏になると火を使わずに仕込めるオイキムチが欠かせない存在。
我が家でも、気温が上がり始める5月の終わりから、夏の間じゅう冷蔵庫に常備されるようになります。

塩もみしてしんなりさせたきゅうりに、手で優しくヤンニョムを馴染ませて──
そんな一連の作業も、手が覚えているから不思議です。
オイキムチの香りは、いつのまにか「夏の始まり」と重なり、私の記憶の一部になっていました。
香りが記憶を呼び起こす
料理の香りには、記憶を引き出す力があります。
味よりも早く、心の奥をノックしてくるような香り。
オイキムチのあの香りをかいだ瞬間、
「台所の床に新聞紙を敷いて、ばあちゃんが仕込んでいたな」
「学校から帰ると、冷たいキムチを出してくれたっけ」
──そんな光景が、ぼんやりとでも鮮やかに浮かんできます。
家庭料理というのは、誰かが誰かのために、繰り返し作り続けてきた愛情のかたまり。
香りは、その愛情の輪郭をふわっと思い出させてくれるものなのかもしれません。
母から娘へ、
手の感覚が受け継がれていく

私は今、母として、妻として、台所に立っています。
タッパーに仕込んだオイキムチを冷蔵庫に入れ、
「きっと明日にはもっと美味しくなる」──そんなことを思いながら台所を後にします。
冷たくて、少し辛くて、ほんのり青さの残る香り。
あのオイキムチの香りを、娘もまた「夏の香り」として覚えていってくれるかもしれない。
料理というのは、手間と気持ちが重なるからこそ、味だけでなく香りにも「ぬくもり」が宿るのだと思います。
オイキムチは、夏の台所のたのしみ
オイキムチのいいところは、何といっても火を使わずに作れること。
食欲が落ちやすい暑い日にも、食卓にちょっとした刺激と涼しさを添えてくれる存在です。

レシピはとてもシンプル。
・きゅうりを塩もみして水を切る
・にんにく、唐辛子、しょうが、ニラなどを刻んだヤンニョムと混ぜる
・冷蔵庫で冷やして完成!
──でも、それだけでは語れない魅力が、季節のキムチにはあります。
「夏が来たな」と感じられる香り。
「誰かのために仕込もう」と思える気持ち。
それが、家庭のオイキムチにはちゃんと詰まっています。
季節のレッスンで、
香りの記憶をともに

waktak cooking classでは、毎年夏の対面レッスン・オンラインレッスンの両方で「オイキムチ」を取り上げています。
ただレシピを覚えるだけでなく、手で混ぜたときの感覚や、鼻をくすぐる香りまで含めて体験していただけたら嬉しいです。
「食べた瞬間に、ふと誰かの顔を思い出した」
そんな記憶のスイッチを、台所からそっと押せるような──
そんなキムチづくりの時間を、一緒に過ごしてみませんか?
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