息子の夏休みが始まりました。
1ヶ月まるまる家にいるのは、正直とても長い。
でも、自由気ままに生きる彼と過ごせるこの1ヶ月は、もしかしたら人生で数えるほどしかない希少な時間なのかもしれません。
きっと、気づいた時にはもう、どこか遠くへ行ってしまうから。
「この前は川に行ったから、次は海に行こうか」
そんな私の提案に対し、「プールがいい」と、きっぱり答える息子。
義姉家族に誘ってもらったキャンプ、近所の夏祭り——息子の夏休みは案外スケジュールでいっぱいです。
そんな中、「ねえ、ママと料理してみない?」と、ふと誘ってみました。
お気に入りの料理本を開き、彼が選んだのは「マグロの漬け丼」。
(……刺身はそのまま食べたいんだけどな)と内心思いつつも、この“自分でやりたい”という気持ちを形にするのが、夏休みの自由研究みたいなもの。
親としての役割は、それを応援すること。
「よし、じゃあ食材をチェックして、買い物に行こう!」

「ごはんはあるよね?大葉は?酒は?醤油は?」
と、一つずつ確認しながら、ないものは自分のノートにメモしていく。
そのノートを持ってスーパーへ。
私は途中で活きたドジョウに心奪われかけるも(笑)、今日の主役は息子。
「ママ、マグロあったよ。これでいい?」
「うん。レシピはマグロだけだけど、サーモンも好きだったよね?」
「うん、じゃあこれにする」
あっさりと決断して、刺身盛り合わせをかごへ。
なんとも潔い買い物が終わり、いざ調理スタート。

米を研ぎ、炊飯器にセットしたら、調味料の準備。
「ママ、小さじってこれ?」
「それは1/2。小さじは“5”って書いてあるのだよ」
たくさんある計量スプーンの中から、自分で探しながら使いこなしていく。
「みりんのアルコールを飛ばすってどういう意味?」
「パパの好きなお酒と一緒でね、煮立てることでアルコール分を飛ばすんだよ」
「Hey Siri、5分タイマーして!」
声をかけながら、レシピと鍋を行ったり来たり。
「大葉あるって言ってたよね?」
「うん、エゴマの葉なら鉢植えにあるよ」
外に出て、4枚ほどエゴマを摘んで、きざんで。
本当に、真剣に、丁寧に。
“おいしく作りたい”という気持ちが、全身からあふれていた。
あぁ、この感じ。
この「誰かのために料理をする」気持ちが、また私を台所に呼び戻してくれる。

ごはんが炊き上がり、丼に盛る。
ちぎった海苔をふんわり乗せて、漬けマグロとエゴマの葉をそっと添える。
「ママ、このタレ余ってるけど…?」
「レシピをもう一度見てみようか」
「……あ、使わないんだね!」
納得した顔で、食卓に自分の丼を運ぶ。
その日、息子はその漬け丼をぺろりとひとりで完食し、
私たちにはほんの一口だけお裾分けがありました。
けれど、その一口が本当においしかった。
そして何よりも、ドヤ顔の息子と、それを囲む家族みんなの笑顔。
それが、何よりのごちそうでした。
「明日は、ママが咲多に伝えたい料理、一緒につくろう」
そう伝えると、「うん!」と力強く返ってきた返事。
ママには、あなたに伝えたい料理が、まだまだたくさんあるのです。
料理は、“いま”を育てる小さな時間
waktak cooking classでは、季節のごはんや副菜づくりを通じて、「誰かのために作る時間」のあたたかさをお届けしています。
大人も子どもも、手を動かしながら気持ちを伝える。
そんな時間を、わたしたちと一緒に過ごしてみませんか?

