シルトク

私はシルトクが好きです。
幼少期から好きだったけど、アラフォーになってから尚好きになりました。
この文を読まれる方は恐らくほとんどが初耳だと思いますので、簡単に説明します。

シルトクは、米粉と煮た小豆を交互重ねて整形し蒸し器で蒸して食べる餅の事で朝鮮半島の民族にとても親しんでいる伝統食べ物です。小豆の赤は邪気を取っ払う風習で受験の時や引越しをしたり、家を建てたりなどの時に食べる縁起の食べ物です。(ここまで書くと日本の白い餅は何故食べるのかも気になる。)

無論、幼少期から好きだったので上記のような概念はほとんど頭になく単純に味が好きでした。何が良いって?
シンプルで素朴さがストレートに伝わり、華やかさも高級感も1ミリもない事ですね。笑(こういう思想が後々私が好きな暮らしにも繋がっていたのです)

味わいがシンプルなので、作り方も実にシンプルです。荒く挽いた米粉を塩と砂糖で味付けした水で濡らしてボソボソさせて一番下地とします。その上に火を通した粗びき小豆を上に隙間なくびっしり乗せていきます。そして整形器に詰めて蒸すという単純な作り方です。粗挽き米粉を元にしているので食べる時もボサボサした食感で口の水分を全部吸ってしまいますが、砂糖の甘みと小豆の風味が合わさって口の中に残り且つ満腹感を与えるこれは、おやつ食べたよ、の幸せが全身に染み渡ります。

幼少期から母はおやつをあんまり買ってくれませんでした。
虫歯になるとか、糖分摂取すぎるとかではなく単純にこれは浪費だから、との考えだったからです。その分、家では毎食ほぼほぼ母の手料理でした。はい、365日。外食した記憶はゼロ。我が家のおやつというと必ず季節の果物はコンテナ買いでした。香水梨、プルーン、みかん、梨、桃、マクワウリ、スイカ、などなど。でも唯一おやつとして買ってくれるのはこのシルトクでした。だからなのか、特に美味しく感じたりこういう餅商売は何故かばあちゃん達がやられていて優しさが詰まっているような目に見えない力を感じていました。

日本に来て目まぐるしく生きる、に一所懸命でしたがふと親元に帰った時には必ず、餅屋の前のシルトクを見ると素通りできなんですよね。そんな私も韓国家庭料理研究家として活動し始め、尚アラフォーという年齢にもなると秋の小豆が食べたくなったり、色に魅了されたり、次世代に残したい想いが強くなる一方。笑
あれ、この感覚って俗にいう年の功ってやつでしょうか?
それとも韓国語のコンデっと言って年取った人が若い世代に押し付ける思想ってやつでしょうか?!
だんだん、80代になる親の気持ちを理解できるようになりました。

それにしても、私にとってどの年代であってもこのシルとくを愛して止まなくず〜〜っと食べたい、ましてや料理家として日本人の生徒さんに大好きな韓国伝統庶民の食べ親しんでいる餅の作り方を教えらえる今全てに感謝です。

続く!

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この記事を書いた人

ひかりのアバター ひかり 代表取締役CEO

中国吉林省の朝鮮族の家庭に生まれる。
20歳に日本語を学ぶために来日。
日本語学校を経て大学を卒業後、家電メーカーショールームアテンダントとして働いたのち、夫の高松と共に新規就農。
こどもが生まれたことをきっかけに、キムチ作りを始め、故郷の家庭料理を広く伝えるキッチンカー、料理教室を開始。
今では全国を回って料理を伝えている。

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