─ 新潟・長徳寺で味わう、旬の膳と祈りの時間

こんにちは。waktak cooking class のひかりです。
新潟で野菜や果物を育てて10年。料理研究とレシピづくりを始めて3年になります。
日々、畑で自然と向き合い、季節の移ろいを肌で感じながら、どうすればこの命をより美味しく、心に届く形で伝えられるか。
その答えを探してきた時間は、私にとってとても多くの学びでとなっています。
そんな私が出会った料理のひとつが、韓国の精進料理(사찰음식・サチャルウムシク)です。
ソウルを訪れたとき、ふと参加した精進料理レッスンで、色とりどりの野菜を組み合わせ、きのこや胡麻、植物性のオイルを使って仕上げる一皿に触れた瞬間、「これは魔法だ」と思いました。
調味料は最小限。火の通し方、切り方、盛り付け方ひとつで野菜がまったく違う表情を見せてくれる。
それは、ただの料理ではなく、自然と人がつながり直す「儀式」のような体験でした。
精進料理で出会った「五観の偈」という考え方
そのレッスンで学んだ中でも、もっとも深く心に残っているのが、「五観の偈(ごかんのげ)」という考え方です。
一、功の多少を計り、彼の来処を量る
二、己が徳行の全欠を忖って供に応ず
三、心を防ぎ過を離るることは貪等を宗とす
四、正に良薬を事とするは形枯を療ぜんがためなり
五、成道の為の故に今此の食を受く
これは、もともと仏教の食事における心得として語られてきたもので、
「この食材がここに来るまでに、どれほどの手間と時間がかかっているかを思い、
自分が今、この食事にふさわしい存在かを問い、
心を調えて、感謝と共にいただくこと」─という思想です。
私には、この言葉がすっと胸に落ちました。
特に農に携わるようになってから、「自然から頂いたものを、どう美味しく無駄なくいただくか」は、いつも考えてきたこと。
たとえば、旬を外した野菜が手に入らない季節には、乾物や発酵の力を借りて調理する。
野菜の皮も、根も、なるべく捨てずに使い切る。
そうした暮らしの積み重ねが、環境を守ることにつながっていくのだと実感しています。
「韓国精進料理×新潟の旬」長徳寺での特別なダイニングへ

そんな思いを発信していたところ、新潟県新発田市にある長徳寺の僧侶・関根さんからお声がけをいただき、
この「韓国精進料理と季節の野菜を味わうダイニング」が実現しました。
今回は、その第二回目の開催となります。
実家の両親が来日するタイミングに合わせて、韓国から本場の食材や調味料を届けてもらいました。
エゴマの実、どんぐり粉、手搾りのエゴマオイル、韓国の親戚が作った手作りの醤油など。
これらの素材を、新潟の旬の野菜と合わせて、精進の技法で丁寧に調理していきます。
【今回の献立|静けさを味わう韓国精進の膳】

- スナップエンドウと熟成ニラ穂の香味和え
└ 春から初夏へ、甘みと歯応え、初夏の緑と風の香りをまとった野菜たち - トマトとエゴマオイル
└ 韓国産エゴマオイルで引き立てる、甘酸っぱいトマト - 山菜の胡麻和え
└ ほろ苦さとコク、季節の野趣を閉じ込めて - アスパラガスと松の実ソース
└ 初夏の味覚を、韓国風白和えに - きゅうりと野菜のナムル
└ 味を引き算した調和のナムル - 菊芋の山椒醤油漬け
└ シャキッとした歯ごたえと、発酵の旨み - 精進餃子 二種
└ 肉を使わず、豆腐やキノコを使った旨みの詰まった餃子 - どんぐり豆腐と豆乳スープ
└ どんぐり独特のほろ苦さを感じる、弾力のある豆腐に手作りの豆乳を合わせた優しい一品 - 韓国海苔
- 豆と雑穀のご飯
- 精進保身湯
└ 植物性だけで仕上げた、深く静かな味わいのスープ
食べることは、祈ること。

このダイニングを通して伝えたいこと
私がこの料理を通して伝えたいのは、
「野菜だけでも、こんなにもおいしい」という驚きでもあり、
「自然の恵みに感謝して、丁寧に生きること」の美しさでもあります。
私たちは、日々忙しく、慌ただしい中で食事を「ただの栄養補給」にしてしまいがちです。
でも、一度立ち止まって、呼吸を整え、ひとさじごとに心を込めていただくと、
その静けさは、心と体を整えてくれるのだと感じています。
どうぞ、この韓国精進料理のひと皿ひと皿に込めた「祈り」を、感じにいらしてください。
▶ 開催情報(イベント詳細)

- 日時:2025年5月26日(月)12:00〜
- 場所:長徳寺(新潟県新発田市)
- 参加費:6,600円(精進料理のフルコース・お茶付き)
- 定員:20名(先着順)
- お申込み方法:こちらのお申込みフォームから
最後に
今回の料理はすべて、長徳寺様の精進料理の基準に沿って、動物性の食材不使用です。
五葷(にんにく、にら、ねぎ、らっきょう、玉ねぎ)の食材は、少量を使用しています。
お腹も心もすっきりと整うような、韓国精進のひとときを、ぜひ体験しにいらしてください。
ご縁ある皆さまと、静かで温かな食卓を囲めることを、心より楽しみにしております。