
地域一帯の梨の農薬散布を担うオペレーターとして、組合に所属させてもらっています。
僕が農業を始めてからすぐ仲間に入れさせてもらったので、かれこれ10年以上続けているでしょうか。
ご近所の農家さんとペアを組み、農薬を満タンにした機械に乗り、2回農薬が空になったらペアと交代。
機械に乗らない間は、次に入れる農薬の準備をしたり、どこで農薬がなくなったかを確認するため、こんなふうに堤防の上から梨畑を見下ろしたりしています。
春になり、堤防の土手にはたくさんの草が生い茂っています。
そこに座り、ボーッと梨畑を眺めているとき、ふと見下ろした目の先に周りとは違う形をした草を見つけました。
その草の根本をつかんで、慎重に抜いてみると…

ノビル!
思わず「見つけた!」と声を出してしまいました。
そしてすぐに頭に浮かんだのは、妻ひかりの顔。
以前住んでいた家の近くにも、ノビルが生えている場所があって、それを自宅に持って帰ったことがあるのです。
それ以来、妻からは「もうそろそろノビルの時期だね」と、なんとなく採りに行けってことなのかな…とプレッシャーを感じながらも、遠くなったそこまでわざわざノビルを採りに行くことが叶わなかったのです。
だから、近くに見つけたことがとても嬉しくて、料理教室中の妻にすぐにLINE。

自分ひとりで掘って持って行ってもよかったんだけど、なんだか「その場所」そのものを共有したくて、一緒に採りに行こうと誘ったのです。
案外僕は共有したがりなのかもしれません。
とはいえ、僕が好きなものが妻が好きなものとは限りません。
ひかりとお付き合いをしてすぐの頃は、
「わー!好みが一緒で嬉しい!!」
なんて言って喜んでいたのに、いざ一緒に暮らしてみると、案外好みの違いは明確に分かれていることに気付きだすのです。
だから、僕が好きで見ていたアニメを、アニメ自体をあまり好まない妻に対して共有することはありませんでした。
そうやって、夫婦で少しずつ違うものを見始めていました。
ところが、ある夜、リビングで一人になった時に観ていたアニメを妻が「面白そう」と見始めたりする。
この人はこれがあまり好きではないから、自分一人で楽しもう。
こんなお互いの決めつけから、僕たちは違うものを見るようになったのかもしれません。
ノビルは妻が好きだから、すぐに知らせよう。
アニメは妻が苦手だから、ひとりで楽しもう。
なんとなく、人に断られるのが嫌だから、その嫌から遠ざかる。
夫婦という、身近な存在だからこそ…なのかな?
採ってきたノビルを見た義母は、「伸びすぎてるね」と言っていたようです。
確かに、以前見たノビルはもっと球が小さかったし、茎も細かった。
それでも片手いっぱいに持ってきたそれは、あっという間に料理に変わり、食卓たくさんに春を運んできてくれました。
「私も場所がわかったから、来年はもっと早く採りに行こうね」
そんな会話が、自然と食卓に花を咲かせます。
こんな小さな「約束」ひとつが、僕たちを夫婦のままでいさせてくれ、人生を豊かに幸せにしてくれます。
夫婦なんだから…と肩肘はらずに、案外こんな気楽でいたほうが、夫婦って楽しいのかもしれませんね。
僕たちが夫婦で一緒にいる意味は、来年もまたノビルをふたりで採りに行って、一緒に食卓を囲むことなんです。
こんな小さくて幸せな約束が、たくさん増えたらいいなと思います。
【5月の料理教室:『帰味』】
旬の香りに包まれて、自分を少しだけ緩めるひとときを。
お申し込み・詳細はこちら▼








